魔王のいない時間5

また魔王がきた。

今日で十二日目。

明日はとうとう刑が執行され私は死ぬ。


だから魔王の気持ちに答えることは出来ない。

なのに。

私は毎日のように顔を合わせる魔王に心が揺れていた。

たった一人、私に笑顔を向けてくれて私を信じてくれる。

私が冤罪ということを知っていてくれる魔王。

愛を告げられる度に、愛しているなら私を助けてここから逃がしてと懇願しそうになる。


だけどもしそれで魔王が――レクシスが人間とらえられ殺されてしまうようなことになったら?

そうなったら私はもう胸を張っていられない。

だから遠ざけようとしたのに。

拒絶したのに。

彼は優しく微笑むのだ。


『愛しています』と。


それでも私はレクシスの申し出を受け入れることは出来ない。

レクシスには大分救われた。

味方が誰一人居ないなかで戦い続けるのはとても苦しい。

彼は突然現れてそんな私の味方になってくれた。

知らず知らずのうちに私はレクシスに支えられていたのだ。


だから彼には私の事など忘れて幸せになってほしい。


「……ありがとう、レクシス」


誰もいない牢の中で呟いた言葉は冷たい壁に吸い込まれて消えた。

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