頭のない生きた屍に囲まれて人類オワタ/(^o^)\

りんたろう

/(^o^)\

 Who is the headless zombie?







 俺は今日も地下に隠れて本を読んでいた。

 

 感染源は不明。



 たぶん接触感染だろうなと俺は予想してる。怖くて外になんて出れたもんじゃない。



 いつどこで、はじめの一人が出たのかはわからない。



 しかし奴らは着実に数を増やし続けた。



 感染すると、脳ミソがスカスカになる。 言葉の感じはクロイツフェルト ・ヤコブ病に似ている。 実態は全く違うのだけれど。



 腹が減った。



 俺は地下室から這い出て、キッチンに行き

戸棚を開ける。



 カップ麺があった。これでいいや。



 あっという間にすぐに沸かすことのできる電化製品に水をいれ 、スイッチを押して、 少し待った。



  沸騰したお湯をカップ麺の容器に注いで、ぼうっと三分を待っている最中にふと思った。



 あ、ヤバい。これじゃダメだ。なんか感染する気がする。



 作りかけのカップ麺をゴミ箱にぶちこむ。



 冷蔵庫のなかを確認。 戸棚を確認 。



 ろくな食べ物がない。ジャガイモ、 コーン、あとスパゲティーの麺にシーチキン。



 俺はそれら食材をスマホにタイピングして、検索ボタンを押そうとした。



 押そうとして、違うなと思って、画面を暗くした。



 俺はスパゲティーを作る。



 ジャガイモをスライスした。コーンは塩で炒めた。ジャガイモを茹でた。麺を目分量で取って、茹でた 。 菜箸で柔らかさを確かめながら茹でた 。



 水を切って、麺を皿に乗せた。ジャガイモを乗せた。コーンを乗せた。シーチキンを乗せた。



 食べた 。ジャガイモは固くて味がしない。塩で炒めるのを忘れていた。コーンは何の問題もない。もちろんシーチキンも。麺は柔らかすぎた。はっきり言って美味しくない。



 しかし俺は満足だった。これでいい。







 Who is the slave without awareness?







  接触感染だ。





 だって外界から孤立した生活を送ってる俺は正常だもの。 ......たぶん。



 この病の感染者に自覚はない。



 病に侵されている自覚のないまま人と接触し、そして感染を拡大させる。



 俺は自覚ない病にすでに侵されているのか?



 ふと怖くなって洗面台へと走る 。



 鏡を見た。怯えためをした自分。頬はこけていて髪はボサボサ。それを見て、少し考えて、だから確信する。



 うん、俺、頭ついてんじゃん。



 俺は病気じゃなかった。





 俺は残り少ない人類のために何ができるかを考えた。

 

 本を書こうか。



 生存者にそれが届くとは限らないが、 届いたら嬉しいし、読む方もきっと嬉しい。



 俺の本は多くから受け入れられないだろう。しかし大衆が正しいとは限らないのだ。



......いまの大衆がって言葉、いいな。使おう。



 親がつけた名前のおかげか、文章はうまく書けた。客観的に見て、たぶんうまく書けた。



 あとはどうやって、この作品を公表するかだ。まぁネットだろうね。便利なサイトはたくさんある。ここは頼る他ない。



 色んなサイトの登録して、色んなサイトで公開した。



  人生で初めてSNSもやってみることにした。 生存者を探すためだ。



 小説を書いている人間を探した。生存者が多い気がしたからだ。



 何人かは生きていた。嬉しかった。


 けど思ったより死んでた。







  物語を公開して何日か経った。



 一つの感想が書かれている。



『 抽象的に書かれているからわかりにくい。結局、ヒロインが主人公のこと好きだったんですか?嫌いだったんですか? そこをちゃんと書かないと、ハッキリ言って読みにくい』



 俺はその感想を一笑に付した。



 大人しく死んでろよ、マジで。







 Who is the source of this pandemic?

 





 ここのところずっと読んでる本がある。



 パンセ。パスカルの著書だ。



『人間はひとくきの葦にすぎない。自然の中でもっとも弱いものである。だが、それは考える葦である』



 人間という種の価値は、考えることにあるそうだ。



 その通りだと俺は思う。だがもう手遅れ。



 この世には考えることのできない屍がうじゃうじゃ湧いている。



 実は治療薬はあって、感染者がそれを自覚して、 薬を飲めば治るのだ。だが彼らは気づかない。



 いや、気づいていないふりをしているのかもしれない。確かにその気持ちはわからないでもない。楽だもんな。





 考えないのは楽だ。少なくとも俺の物語に感想をくれたあの人はそれを知っている。 自覚あるなしは別として。



  ぼかして書いたのは考えて欲しいから、 一から百まで書くのは興ざめだからに決まってるじゃないか。少しは考えてほしかった。間違っててもいいから考えてほしかった。



 どうしてそんなに、わからないことが怖いんだろう。









 パスカルの言う考えるという行為は、動物を比較対象としていないと思う 。



 

 比較対象は頭のない、生きた屍だ。





 読者に分かりやすいように作者が媚を売る形で書かれた文章。



 簡単な歌詞を単純なコード進行に乗せた分かりやすい曲。



  困ったら解決策をすぐに分からせてくれる検索ボタン。

 

 それらが悪いとは言わない。ただ、なぜそれが人気なのかずっとわからなかった。けど最近ようやくわかった。自分で考えて、ようやく結論が出た。



 考えなくて済むからだ。



 耳に、目に入る情報は全て、これが悪でこれが善だよと教えてくれる。



 いまはこれが美味しいんだよ。



 いまはこれが格好いいんだよ。



 この漫画が面白いんだよ。



 このアニメが面白いんだよ。



 このラノベが面白いんだよ。



 こいつが悪いんだよ。



 これは泣ける映画だよ。



 あの島はこっちのものだよ。



 あの民族は糞野郎ばっかなんだよ。



 こいつは叩いてもいいんだよ。



 



 屍はそれを受け入れる。考えない。









 人間は考えることが嫌いだ。



 だから彼らは頭を失った。彼らに自覚はない。考えようとしないのだから気づくはずがない。



 自覚ないまま生きて、そして他人に影響を与えていくんだ。



 感染は拡大した。そして今に至る。




 俺はわからないことは怖くない。




 正体不明の病原体に体を脳を乗っ取られる方が怖い。








 パスカルの言葉通りなら、 人間は滅びかけている。












 それを声高に叫んだところで耳を貸す人間は少ないだろう。




 でもね、俺は書かないといけない。そうしないと気がすまない。





 こういう内容だから、受け入れられはしないだろうけど。





Answer

Maybe you're not.Coz you have finished reading this story.And one thing we know for sure, he is not.

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