第6話転校

母と喧嘩して私は部屋に閉じこもり気づけば朝になっていた。今日は日曜日。学校も塾も休みの日だ。でも今日も私は勉強に明け暮れるのだろう。憂鬱な気分のままリビングに行くと母は私を転校させると言い出した。

「やっぱり美優の将来を考えると今からでも編入試験を受けてより勉強に集中できる環境にした方がいいと思うの。それに学校の帰りにそのまま塾にだって行けるでしょ?」

「何言っての?私転校なんてしないよ」

「お母さんはあなたの将来を思って言ってるのよ。何度も言ってるでしょ?学歴は大事だって。」

「それはお母さんの押しつけでしょ!?」

「今はまだわからなくてもそのうち感謝する日が来るわ」

「私は今の学校がいいの!」

「今の学校じゃ勉強時間が足りないじゃない。この前の塾の模試だってクラスで何番だったの?半分より下だったでしょ?」

「あれは先生の間違えでまだ習ってないところから半分以上出たからだって説明したじゃない!塾からも説明の通知来たし」

「でも1位の子のお母さんの話だと毎日予習復習をさせてるし学校の授業は模試の範囲なんてとっくに終わっててもっと先をやってるそうよ」

「だからって」

「いい?あなたはもっと勉強が必要なの。そんな事じゃこの先困るのはあなたなのよ?」

「もう中三だよ?あと半年もすれば卒業だし」

「だから?」

「え?」

「あと半年で卒業するからなに?」

「学年一位をキープしてるし仲のいい友達だっているのに今更転校なんて」

「大して偏差値が高いわけでもない公立の学校で1位になるなんて簡単でしょ?友達だって受験するとなればみんなライバルなのよ?美優はそんなことだから成績が上がらないのよ」

「少しくらい私の話も聞いてよ」

「聞いてるじゃない。聞いた上で転向を考えてるんでしょ?編入試験は来週だからちんと勉強しておくのよ」

「聞いてないよ」

信じらんない。子供の話を聞かないで勝手に話を進めるなんて。転校なんてしたくない!

「おはよう」

「お父さん」

「ちょうど良かった。あなたからも言ってあげてよ。この子ったら編入試験受けないって言うの」

「そうなのか?」

「・・・」

「黙ってから分からないぞ?」

「だって転校したくないしそんな話聞いてなかったもん。お願い!学年一位はキープするから今の学校に居させて!」

「だから美優のことを考えてお母さんは」

「母さんは少し黙ってくれないか?」

「あっあなた」

「美優」

「なに?」

「美優は今なにをしたい?」

「何をって」

「お前も年頃の娘だ。友達と遊びたいだろうし好きな子だっているだろう?」

「そりゃ皆みたいに遊びたいしマンガとかゲームとか欲しいけど」

「勉強はどうなんだ?」

「勉強はこんなに苦しい思いをしてまでやりたくはない。でも勉強が嫌いなわけじゃないよ。ただもうちょっとゆとりが欲しいの」

「母さんは美優のことを思ってるって言ったが本当に考えてたのか?」

「あっ当たり前じゃない!我が子の幸せを思わない母親がどこにいるのよ!」

「それならもっと美優の話を聞いてやってもいいんじゃないか?」

「あなたまで」

「とにかく編入試験のことは考え直そう」

いきなり何?会話に入ってきて父親ずらしてなんなのよ!今までまともに会話なんてしてこなかったのに!!今更なんで?どうして?

今更そんな優しさいらない!!!

「お母さんもお父さんも大っ嫌い!!!」

「突然なによ!お母さんはこんなにもあんたのことを思ってるのに!!!」

「そうだぞ!やりすぎていたとはいえ母さんはお前のことを」

「父親ずらしないで!!!何度もお母さんのこと相談しようと思ったのに聞いてくれなかったのに!!!今更もう遅いよ!!!そんなに気にかけたってもう2人のことなんて大っ嫌い!!!」

「美優」

「だっだいま!」

「結月」

「お兄ちゃん」

結月と言うとは10歳年上の兄だ。兄は結婚しており今は奥さんの実家で奥さんのご両親と一緒に暮らしているためお正月くらいしかうちには来ない。それなのにどうして?

「菜乃花がさ美優に会いたいって言ってたから今日は休みだしちょうどいいかと思って」

「結月悪いが今取り込み中だ」

「知ってるよ。外まで聞こえたもん」

「なら話が早いわ。結月からも言ってちょうだい。この子私たちのこと大っ嫌いって言ったのよ」

「そうなんだ。でも俺も母さんのことも父さんのことも嫌いだったよ」

「結月まで」

「だって勉強勉強うるさいんだもん」

「それは結月のことを思って」

「おかげで友達の会話に入れなくてクラスで孤立したの知らないでしょ?」

「孤立してたの?」

「うん。しかも編入試験受けて俺転校したじゃん?」

「そうだったな」

「そこで成績が下がったら母さんなんて言ったけ?」

「次は頑張りなさいって」

「違うよ。『あんたなんて出来損ないよ!どうしてこんな簡単なことが分からないの?』って鬼の形相だった」

「そんなこと言ったかしら?」

「言った方は忘れるよ。あのさそんなに期待すると子供の方は負担になって心が壊れちゃうの。反省するまで美優はうちで預かる。菜乃花も預かっていいって言ってるしお義母さんとお義父さんも会いたいって言ってるから。美優は荷物まとめてきな」

「うっうん!」

「いい子」

驚いた。お兄ちゃんもそんな生活をしてたんだ。もしかしてそれが嫌で家を出ていったのかな?そんなことを考えながら荷物まとめてた。

奥さんの菜乃花さんはどんな人だろう?

きっと素敵な人なんだろうな。

私は菜乃花さんには会ったことがないから楽しみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る