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第1520話 原因になりそうな魔物はいないようでした
第1520話 原因になりそうな魔物はいないようでした
「クスノキ以外には、特殊な植物、魔物などはいたりしますか、アルトゥルさん?」
「そうですね……」
少しだけ強引に話しを戻して、アルトゥルさんから近くの森に関して色々と聞いてみる。
クスノキの話で少しだけ緊張が解けたのか、最初よりは話しやすそうだった。
とはいえさすがにアルトゥルさんが詳しいといっても、全て知っているわけではないのでハンネスさんも、時折補足しながらだけど。
魔物に関しては、ニグレオスオークやカウフスティア以外にも、フェンリルの森にいたようなオークやトロルド、それからウルフなどの他に、コカトリスを始めとした空を飛ぶ魔物が数種類いるらしい。
ラーレがいた山にもつながる森な事もあって、鳥系の魔物が多いのかもしれない。
ともあれ、それら森で見かけるような魔物が別の魔物に遠隔で何かを仕掛ける、というような事をしたりはできないだろうとの結論だ。
そちらに関しては、セバスチャンさんやユートさんなど魔物に詳しい人達が保証してくれた。
「魔物の可能性がないとなると、やはり何らかの植物が原因……?」
「そう考えるのは早計だぞ、タクミ殿。外的要因……つまり、別の魔物が流れて来てといった可能性も考えられなくはない」
「タクミ君たちが危惧しているように遠隔で、遠くから仕掛けてくるような魔物もいるからね。厄介だよ、姿は見せず、けど確実に自分達以外の種族を排除する……そんな魔物だから」
「そんなのがいるんだ……」
ユートさんの言っているような魔物は、確実に知性がある魔物なんだろう。
フェンリル達も、意思の疎通ができればちゃんとした知性を持っているように感じるから、そんな魔物がいても不思議じゃないし、むしろいて当然と考えるべきか。
確かに、遠くから権謀術策を巡らせる……という程かどうかはともかく、そういった事ができる魔物は厄介だろう。
「ですが、そういった魔物が余所から流れて来る、という可能性はほぼないかと。そして、多様な魔物が森に棲んでいる事から、姿を隠しているのではなく近くにはいないのも間違いないでしょう」
ユートさんの言葉を細くするように、ルグレッタさんが付け加える。
姿を見せないようにしているらしいから、村の人が発見できないだけかもと思ったけど……他の種族を排除しようとするのであれば、色んな魔物がいる森のままなのはおかしいって事みたいだ。
さらに、そんな知性を感じられる魔物が知らず知らずのうちに迷い込む、というのも考えづらいと。
シェリーみたいに、レオの気配に興味をそそられてというのも考えられたが、自分達の姿を極力見せないようにしている魔物なら、警戒心が強くてそういった事もほぼないとも考えられるな。
「だとすると、やっぱりなんらかの植物が原因……と考える方が自然かな? まぁ、植物も勝手に移動したりは……しませんよね?」
水中や地中で完結する植物はあれど、自力で移動したりしないのが当然なのが植物だ。
ただここは日本どころか地球ですらない異世界……魔物もいる事だし、移動しないと言い切る事はできずに不安に駆られてついつい皆に聞いてしまう。
「うーん……大半の植物はタクミ君の言う通り移動しないのが当然だけど、でもいなくはないかな? 分類は難しいところなんだけど」
「……いるんだ」
ユートさんの返答に、エッケンハルトさんやセバスチャンさんが頷き、俺は項垂れた。
ハンネスさんやアルトゥルさんなど、一部の人が頷かなかったのは、そういった存在を見た事がないからかもしれないが。
ともあれ、植物の形をした魔物……魔物が植物とか……よくわからないけど、そういったのもいるみたいだ。
空想上の存在で言うと、アルラウネやトレントだっけ? そういった植物の魔物もいるから、似たようなのがこちらの世界にもいるって事だろう。
まぁ、トレントやアルラウネなどの植物の魔物が、自力で移動できるかは空想の中身によって違ったりはするけど。
あと、植物の形をした魔物なのか、魔物のような植物なのか……なんて、どうでもいい事が頭に浮かぶけど、そこは本当にどうでもいいなと払拭する。
「ま、まぁともかく、カウフスティアに影響を与えるような植物や魔物が近くにいたのだとしたら、レオが気付いてもおかしくはないと考えます」
「うむ、そうだな。特にレオ様は、タクミ殿の……なんだったか、薬草を食べていたのだろう?」
「感覚強化薬草ですね。はい、レオだけでなくフェンリル達にも食べてもらっていましたから、通常より遠くの状況までわかっていたと思います」
感覚強化は暗くともよく見えるようになる視覚強化と、気配などに敏感になる物と二種類あり、総じて感覚強化薬草と呼んでいる。
最初は気配が敏感になる方が、嗅覚を鋭くする効果だと思っていたけど、何度か使っているうちに気配察知の強化の方が強く表れているのに気付いた。
多分、嗅覚強化は気配察知のために使うとして、副産物的な強化なんだろう。
まぁ実際、嗅覚だけを重視する事もないから、どちらが強い効果が出ているかという細かい部分は、今のところ重要ではないんだけども。
「そのレオ様ですらわからない程遠く、となると遠隔で何かを仕掛けてきている可能性は低いのだろうな」
「はい」
通常でもかなりの広範囲……少なくとも、この屋敷内からランジ村全体の気配くらいは察知できるらしいと、空いた時間にレオと話して聞いていた。
さらにそこから気配察知強化の薬草を食べたレオなら、もっと広い範囲で気配の察知ができるはず。
屋敷内という遮られた空間ではなく、森の木々があったとしても開けた空間でのレオが察知できる気配は、人間の俺にはよくわからない事になっていそうだ
そのレオがわからない程遠い場所からとなると、何かしらの手段でカウフスティアに影響を出すのは、現実的じゃない……とエッケンハルトさんは言いたいのだろう。
「うーん……そうなると他には……」
「だが、それもやはり……」
「タクミさん、他にこういうことは考えられませんか……?」
等々、今ある情報の中でカウフスティアの異変、リーザの体調悪化、レオが嗅いだ嫌な臭いについて話し合っていく。
けど、結局どれも可能性の高低はあれど、それだという内容の物は出なかった。
まぁ情報が少なすぎるから、仕方ないしある程度想定していた事でもある。
とりあえず今は、あらゆる可能性の洗い出しと領主のエッケンハルトさんへ、森で異変と言えるかもしれない事がある、という報告をするのが重要だからな――。
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