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第477話 リーザはレオに咥えてぶら下げられました
第477話 リーザはレオに咥えてぶら下げられました
「……水って、すごいんだね?」
「そうだぞ。大量にある水は、凶器にもなるからな。気を付けないといけない。そうだな――レオ、ちょっといいか?」
「ワフ? ワウ!? ガブブブ……!」
「ギャブブブブ……キュゥ……キュゥ……」
説明を終えて、レオにリーザの事を頼もうと考え、泳いでいる方へ声をかける。
すぐにこちらへ顔を向けたレオは、返事をするように口を動かした。
返事をするのはいいが、口に咥えていたシェリーが落ちて、また溺れている……。
すぐにまたレオが咥えて持ち上げたが、力なく口にぶら下がりながら、小さく鳴いているシェリー。
シェリーは、もう川の中に入りたくなさそうだな……。
「ちょっとこっちに来てくれるか? またシェリーを落とすから、返事はしなくていいぞ!」
シェリーを口にぶら下げているレオを呼ぶ。
こくりと頷いたレオは、ザバッと川の中から立ち上がり、水を掻き分けつつゆっくりとこちらへ来た。
「キャゥ……キャゥ……」
「よしよし」
「ワフ?」
水のない場所で、レオの口から解放されたシェリーは、お座りしたままがっくりと項垂れて、荒い息と共に小さく鳴いている。
心配したリーザが、ゆっくりとシェリーの濡れた毛を撫でて、落ち着かせる。
安全な場所へシェリーを置いたレオは、どうしたの? と聞くようにこちらへ顔向けて首を傾げた。
「リーザの事なんだけどな? 川に入ってみたいけど、見た事ないくらい大量な水で、ちょっと怖いみたいだ。レオ、危険な事がないように見ててくれるか?」
「ワフ! ――ワフワフ、ワウ?」
「ママ、一緒にいてくれるの? だったら安心!」
俺が頼むと、すぐにレオは頷いてシェリーを撫でているリーザに顔を近付ける。
レオを見上げて笑顔になったリーザの表情には、さっきまで川を見て不安気だった様子はすっかりなくなったいた。
やっぱり、誰かが付いてくれてると、安心するもんだな。
俺が一緒に入ってやればいいんだが、今全身びしょ濡れになるわけにもいかない。
野営の準備もあるし、手伝わないといけない事も多い。
さすがに、暢気にリーザやレオと遊んで、準備は人任せというわけにはいかないからな。
「それじゃ、レオ。頼んだぞ?」
「ワフ! ワフフ」
「にゃふ?!」
レオにリーザの事を頼み、セバスチャン達が準備を進めている方へ。
その途中、俺に対して頷いていたレオが、リーザの方へ鳴く。
そのすぐ後に、リーザから悲鳴のような声が聞こえたので、振り返ると、シェリーのように首元……服の襟部分を加えてレオの口にぶら下がっているのが見えた。
……そうやってリーザを守るわけか。
それで大丈夫かと、一瞬セバスチャン達の方へ向かっていた足を、レオ達の方へ戻そうと思ったが、すぐに止める。
ぶら下がったままで、リーザが楽しそうにしてたから、問題はなさそうだ。
レオがリーザに危ない事をさせたりはしないだろうし、体が宙に浮いてブラブラしてるのが楽しいのか、笑い声が聞こえて来たからな。
悲鳴のように聞こえたのは、急に加えられて体が浮き上がった驚きからだったか。
「タクミさん、レオ様達の方はよろしいのですか?」
「クレアさん。はい、あちらはレオに任せて来ました。シェリーが泳げないのは驚きましたが、大丈夫でしょう。――少なくとも、アンネさんよりは……」
「シェリーは、お風呂でも私に抱かれて浸かりますからね……泳いだ経験はないのでしょう。アンネは……ちょっと疲れすぎじゃないかしら?」
「ぜぇ……はぁ……そうは……はぁ……言いますけれど……ふぅ……クレアさん。……はぁ……私だって、疲れたくて疲れてるわけでは……はぁ……ふぅ……ありませんわよ……」
途中で、休憩していたクレアさんに声をかけられ、そちらと話す。
クレアさんもシェリーの様子は見ていたらしく、風呂に入った時の事を思い出しながら言っている。
そのクレアさんの後ろには、息も絶え絶えといった様子のアンネさんが、ぐったりとした様子で座ってる。
大きめの石に腰かけて、上半身を前に倒して、今は顔を上げる気力すらないようだ。
俺とクレアさんの声は、しっかりと聞いているようで、なんとか荒い息を吐きながらも、なんとか言葉を絞り出す。
クレアさんも、前回ここへ来た時は疲れてしまっていたが、ここまでじゃなかった。
アンネさん……運動不足なんだろうな……引きこもりたいと言ってたから、普段はほとんど外に出たり、歩き回ったりとかはしないんだろう。
街中なら、休憩をしたり悪路ではないためなんとかなっていても、さすがに森の中はしんどかったようだ。
通って来た道も、獣道のようだったし、整備なんて当然されてないので、途中の石に躓いたりする事もあったしな。
「セバスチャンさん、何か手伝う事はありますか?」
アンネさんの事はクレアさんに任せ、セバスチャンさんへと声をかける。
クレアさんも手伝いたかったらしいが、放っておくとそのまま倒れて動かなくなりそうなアンネさんを任されたらしい。
まぁ、動かなくなるというのは大げさかもしれないが、一応見ておいた方がいいだろう。
セバスチャンさんは、ニコラさんに何やら指示をしてから、こちらへ振り向いた。
「おや、タクミ殿。レオ様達の方はよろしいのですかな?」
「はい。あっちはレオに任せて来ましたから。何かあれば、手伝いますよ? さすがに何もかも任せて……と言うのは気が引けますし」
なんというか、全てを人に任せて自分はドンと構えておく……なんて事ができない性格なんだろう。
自分にできる事があるのなら、手伝っていた方が落ち着くしな。
「前回もそう言って、見張りを買って出ておりましたな。ふむ……そうですな……では、昼食前のように焚き火に使う枝を拾って来てもらえますかな? さすがに人数が多いようで、集めるのにも時間がかかっております」
「はい、わかりました。――あちらは何をしているんでしょう?」
「いえ、少々場所の確保に邪魔な石があったので、どかしてもらおうと思いましてな。本当はフィリップさん達にやってもらおうと思ったのですが……何やら張り切った旦那様がやると言って聞かなかったもので。一応、手伝いを置いておるので、大丈夫でしょう」
「はぁ……そうですか……」
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