【大感謝!520万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第379話 犯人はスラムで見た人物のようでした
第379話 犯人はスラムで見た人物のようでした
「そうですか……レオ様……いえ、シルバーフェンリルに、人間が敵わないと言われる所以を、垣間見た気がします」
「そうですね。ニコラさんやヨハンナさんのように、訓練をして鍛えている人ですら、動けなかったようですから」
俺もそうだ……体を鍛えてるとはいえ、ニコラさんやヨハンナさん程じゃないが、ほとんど動く事ができなかった。
なんとか、少しずつ動いてレオの顔へと移動できたが、一歩一歩が随分重く感じた。
レオが体に力を溜めるのに、時間をかけてたから、何とか間に合ったが……即座に行動してたら、間に合わなかったな。
こう考えると、本気でレオが怒ってた事が良かっとも言える。
オークを倒した時のように、それなりの力とかで対処しようとしてたら、素早く動いてただろうしな。
……いや、本気で怒ったから重圧のようなものが発生したのか?
結果オーライ……という事にしておこう。
誰にも被害は出なかったんだしな、リーザ以外は。
「それでレオ、石を投げた犯人はわかるか? 投げられる前に気付いてたんだろ?」
「ワフ、ワフワフ」
「そうか……やっぱりな……」
「……」
レオに石を投げた犯人を聞くと、頷きと共に答えが返って来る。
それは、俺の予想通りの人物だったようだ。
リーザにもレオが言った事がわかるから、犯人の事を聞いて、こちらを見上げてた顔を俯け、押し黙ってしまった。
「レオ様は、なんて言ったのですか?」
「えぇと……」
クレアさんとライラさんに、誰が犯人だったのかを説明する。
石を投げた人物は、以前スラムでリーザをイジメていた奴の一人だ。
若い男の声とライラさんが言っていたし、リーザに魔物と叫んだ事、俺が人の輪の中で見かけた顔と一致する。
スラムにいたあいつらのうち一人が、偶然なのかなんなのか、ハルトンさんの店近くに来ていて、リーザを見かけたから……という事なんだろうと思う。
以前はレオを見て逃げたのに、今回は近くにいたレオに怯える事なく、リーザへ石を投げるのは、大した根性だと思うが、決して褒める気持ちは沸かない。
俺も、もしかするとその場にいたら、レオと同じく怒ってたかもしれないな。
今も犯人に対して怒りを覚えているが、ここで取り乱したりしたらレオやリーザに示しがつかないからな。
なんとか怒りを鎮めて、冷静になるよう努めた。
「そうですか、スラムの人が……」
「レオもそう言ってますし、実際あの時見かけた人物を、移動する際に見ました。間違いないでしょう。それにしてもレオ、お前ならリーザを庇ったり、連れて逃げられたんじゃないか?」
「ワウゥ……ワフワフ、ワーフ。」
何々? 人間の敵意は慣れてないからわかりづらかった?
……まぁ、日本で人の敵意を向けられる事のない生活をしてたんだから、慣れてなくて当然か。
人懐っこいし、この世界に来ても、好意的な人が多かったからな……公爵家の力が大きいと思うが。
魔物はまだしも、人に囲まれながら、その中で一人の人物が向ける敵意に気付いて反応しろ……というのは難しいか。
しかも今回は、リーザに敵意が向いていたみたいだしな。
さすがのレオも、自分に向けられた敵意じゃないから、感覚が鋭くても厳しいだろう。
「すまないなレオ、怒ってしまって。レオがリーザを守ろうとして、怒ったんだな。リーザも、レオを止めてくれてありがとう。偉かったぞ?」
「ワフゥ。ワフワフ」
「えへへ……」
とりあえず、理由がわかった事でレオに怒った事を謝り、仰向けのお腹を片手で撫でながら、もう片方の手で、リーザを褒めるように撫でる。
怒られない事にホッとした息を吐いたレオは、お腹を撫でられて気持ち良さそうに鳴いた。
リーザも、褒められて照れたように笑い、空気が和らいだ。
「でもリーザちゃん、そんな事をやって来た相手の事を、怒っていないの? レオ様を止めようとしてくれたのは、助かったけど……」
レオとリーザを撫で、空気が弛緩したところで、クレアさんからの質問。
リーザに怒ればよかったとか、やり返せば……なんて物騒な事を考えてるわけではなく、単純に疑問、といった感じだな。
俺はスラムでの事を直接見て、リーザにも聞いていたから納得できるが、それを知らないクレアさんには不思議に感じるのかもしれない。
自分が悪いわけではないのに、酷い言葉を投げつけられ、さらには石まで投げられるなんて、怒りが沸いてもおかしくないからな……まったく!
……おっと、自分で考えてて俺の方の怒りが沸いてきてしまった。
敏感なレオが、俺の気配に気付いたのか、プルプルと手足を震わせてる。
レオに怒ってるわけじゃないからな?
ともかく、深呼吸をして落ち着こう……。
「うん、私は怒ってないよ。だって、怒ると相手も怒って、キリがないから……」
顔を俯かせ、スラムでの事を思い出してるのか、悲しそうな声で話すリーザ。
酷い事をして来た相手が悪い……というのは当然なのだが、そういう相手に限ってこちらが怒って返すと、理不尽に怒ったりもする。
怒りでさらに怒りを呼び、悪循環を招く……なんて、大袈裟な事になるかはその時次第だが、ほとんどの場合、良い方向にはならない事が多い気がする。
「私が獣人だからって、色々痛い事もされたけど……だからって、怒ったらもっと酷い事されたんだ。だから、じっと我慢しようって思って……我慢してたら、相手が疲れて止めてくれるんだ」
「……そう」
俯き、涙を堪えるようにして話すリーザに、クレアさんはなんと言葉をかけていいのか、わからないみたいだ。
ライラさんは絶句し、レオは仰向けになった顔を持ち上げ、リーザを心配するように鼻をスピスピ鳴らしてる。
リーザにとって、じっと耐えて我慢する事が、早く終わるための一番の最善策だったんだろう。
助けた時もそうだったし、リーザからも聞いているから、その時の様子が目に浮かぶようだ。
それでも、あの時もう少し、リーザをイジメてた奴らを懲らしめてやっておけば……。
いやいや、リーザが言ってるように、怒りで返したら向こうも怒るだけだな。
レオがいて、俺自身も鍛えているとはいえ、過信は禁物だ。
下手をすると逆恨みだとかで、リーザにまで危害が加わる可能性もある。
今回のような事は、起きないに越した事はないはずだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます