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第279話 エッケンハルトさんと合流しました
第279話 エッケンハルトさんと合流しました
「そういえば、エッケンハルトさんはどうしてますか? まだ寝てます?」
「いえ、本日は特にやらなければいけない事も無いので、今は部屋でのんびりされております」
「そうですか、わかりました」
「お呼び致しましょうか?」
「あぁ……いえ、のんびりしているのなら、そのままで良いですよ。エッケンハルトさんも、色々疲れているかもしれませんし」
「畏まりました」
呼んで来るか聞かれて、ちょっとドキッとしてしまった。
今エッケンハルトさんがどうしてるのかわからないが、もしかしたら屋敷を抜け出そうとしてる最中かもしれないし、既に抜け出してるかもしれない。
ここでセバスチャンさんがエッケンハルトさんを呼びに行ったら、計画がバレてしまうからなぁ……頼まれた以上、ちゃんとしないと。
……セバスチャンさんや、屋敷の人達の事を考えると、早々にバレてエッケンハルトさんがラクトスに行かない方が良いのかもしれないけど……。
「それでは、行ってきます」
「はい、お気をつけて行ってらっしゃませ」
「「「行ってらっしゃいませ!」」」
セバスチャンさんと話しながら玄関まで行き、そこから扉を開けて外に出る。
見送りに来てくれたのは、セバスチャンさんだけでなく、他の使用人さん数名。
エッケンハルトさんやクレアさんが、屋敷を出る時程じゃないけど……俺にこんな見送りは必要ないんだけど……まぁ、良いか。
「それじゃ、レオ。行こうか」
「ワフ! ワフワフ」
「ははは、そんなに走るのが楽しいのか?」
「ワフゥ!」
外に出て、すぐに俺に背を向けてお座りをしたレオ。
その背中に乗りながら、レオが楽しそうに鳴く。
裏庭だけじゃ、レオが走るのに狭いだろうから、外を走れるのはやっぱり楽しいんだろう。
レオの散歩的な意味もあって、ラクトスの街へ行くのはちょうど良かったのかもな。
「レオ、ストップだ!」
「ワフ!」
「……おぉ、タクミ殿。奇遇だな」
「はぁ……奇遇って、昨日話したじゃないですか?」
「はっはっは、こういうのは様式美みたいなものだな。一応、私とタクミ殿は、ラクトスへの道すがら偶然会った、というな」
「そういうものですか?」
「ワフ?」
屋敷からレオが走り出して数分。
ラクトスへの街道沿いに、エッケンハルトさんの姿が見えたので、レオに声をかけて止まってもらう。
木の影からゆっくりとこちらに来たエッケンハルトさんだが、何故か偶然を装っている。
……様式美とかはよくわからないが、エッケンハルトさんがそうしたいと言うのなら、そういう事にしておこう。
レオも首を傾げてるけどな。
「すまないな、タクミ殿」
「いえ、一緒にラクトスに行くくらいなら、別に構いませんよ……俺は、ですけど。それに、まだ街の中に詳しくないので、誰かいてくれた方が安心ですしね」
「まぁ、他の者に見つかるとうるさいだろうが……私が言っているのはそうじゃなくてだな……」
「え?」
エッケンハルトさんが俺の後ろに乗り、立ち上がったレオが走り出して少し、何故か謝られた。
ついて来た事や、他の人に内緒にしてる事を謝って来たのかと思ったが、違うようだ。
「レオ様に一緒に乗るのが、こんな男ではな……クレアの方が良いだろう? ……ライラも良いのかな?」
「なっ! いや、何を言ってるんですか!」
「いやなに、レオ様に乗って、後ろからしがみつくのであれば、女性の方が良いだろう? それとも、タクミ殿は男の方が良いのか?」
「……そりゃ、俺も男ですから……女性の方が良いとは思いますけど……」
「だろう? 男が男にしがみ付かれても、何も嬉しい事なんてないからな! だからすまないなと……」
「別に謝る必要はないですけど……」
エッケンハルトさんは、俺にしがみ付いてレオに乗っているため、その事を謝って来たらしい。
確かに、男が男にしがみ付かれて喜ぶという趣味は、俺には無いが……。
だからと言って、自分の娘であるクレアさんや、使用人のライラさんの名前を出すとは。
まぁ……あの二人は女性として……その……胸部が特に分厚いように感じるけど……確かに後ろからしがみつかれると想像すると……いかんいかん、本人のいないところでこんな想像するもんじゃない。
……本人がいるからといって、想像して良いものでもないけどな。
「ふむ……想像したか」
「……エッケンハルトさんが変な事を言うからですよ」
想像を振り払うように、頭を振って失礼な考えを頭から追い出していると、後ろから鋭い指摘。
あんな事言われたら、誰だって想像するよな?
「はっはっは! 男ならそういうものだ! ……これなら、クレアも望みがないわけではないのかもしれないな……」
「ん、何ですか?」
「いや、何でもないぞ。そう言えばタクミ殿、クレアが最近よく着けている髪飾りなのだが……あれはタクミ殿が?」
「え? はい。初めてラクトスに行った時、雑貨屋にあったので思い切って買ってプレゼントしました。ティルラちゃんにもあげましたよ?」
「ティルラのは……あぁ、あのネックレスか。狼の意匠だったか……喜んだだろう?」
「そうですね。喜んでくれました」
何かを小さく呟いたエッケンハルトさんだが、すぐに話題を変えるように、クレアさんにプレゼントした髪飾りの話になった。
ほぼ毎日、付けてくれてるからなぁ、クレアさん。
父親としては、娘が見覚えの無い物を身に着けてたら、気になるのかな?
「……最初から二股はいかんぞ?」
「ぶっ! そ、そんなつもりはありませんよ! 屋敷にお世話になるから、感謝の気持ちとしてプレゼントしただけです!」
「ふむ……そうか?」
何を言い出すんだ、エッケンハルトさんは。
そもそも、女性慣れしていない俺が、いきなり二股なんてできるわけないじゃないか。
ティルラちゃんなんて、まだ子供だし……俺はロリコンでは断じてない!
クレアさんは……この前エッケンハルトさんが覗いてた時は、少し良い雰囲気だったし、美人だし、性格も良いし……あの時邪魔が入らなかったら……じゃない!
変な事を考えないように、エッケンハルトさんに注意しないと!
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