第15話別れたくない

海に行った日の夜夕から手術を受けられることになったという電話があった。お金は西園財閥が出してくれるらしい。財閥側は私との約束を守った。だから私は夕と別れなければならない。「大好きな人のために」そう言い聞かせて別れを告げる言葉を徹夜で考えた。

別れるなら早い方がいい。明日補習が終わったら別れを告げよう。

翌日夕暮れの教室に気持ちを落ち着けてから行った。

「ごめんね。ホームルームが長引いて。あのね夕」

「どうしたんだ?」

「私たち別れよう」

「え?」

「夕のことは大好きなの。だから別れて欲しいの」

「なんで?」

昨日徹夜で考えた台詞はどこいった?

夕を見てたら昨日考えた台詞が頭からなくなった。なんか夕を見てたら言えなかった。

夕には「どうして?」と何度も聞かれたが私は「大好きだから別れる」としか言えなかった。

その日の夜私は一晩中泣いた。もう一生ぶんの涙を流したんじゃないかと思うくらい泣いた。それから私は夕と顔を合わせないように。廊下なんかですれ違う事がないようにと夕を避ける生活を送った。夕の顔を見たら「別れたくない」って言ってしまいそうだったから。夕を避ける生活が始まって半年が経ち3月になった。いよいよ今日私達は高校を卒業する。

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