第97話 呪いの正体


 「それでは王への進言は、こちらに任せてもらうよ」


 ジッガ・ヤンはそう言うと椅子から立ち上がり、部屋の外へ―――いや、立ち止まった。


 「そう言えば、君の話で気になる点があったな」


 「気になる事?……ですか?」


 「君の呪いの事だ」


 「僕の呪い?」


 そう言えば……

 今までジッガ・ヤンに語った僕の物語。


 その中で『呪い』についての話は、どこか……何と言うか……中途半端と言うか、


宙ぶらりんと言うか……不自然なほど、どこにも何にも繋がっていない。


 『呪い』


 あの初めてのダンジョン探索。行方不明になる事故が起きた。


 行方不明から生還した僕に、キク先生はこう告げた。


 「君には未知の呪いがかけられている」


 ……いや、実際に何て言われたのかは、正確に覚えていないのだが、たぶん、そんなニュアンスの言葉だったはずだ。


 ならばと、呪いをかけたはずのドラゴンに聞いてみたが、本人は心当たりがない感じだった。


 だから、そのまま、忘れていた。


 いや、目の前の老人に語っていた時点で忘れていたわけではないはずなのだが……


 どう表現すればいいのだろうか?こう……意識の外に……ん~違うな。


 重要視していなかった、と言うのが正しいのだろうか?


 そんな僕にジッガ・ヤンは言う


 「不思議なのものだね。外から見ている者はソレを『呪い』と呼ぶ。『呪い』をかけたであろう本人は『呪い』をかけたという自覚がない。そして、『呪い』をかけられてはずの君は、ソレを重要だと思っていない。なぜ、こんな複雑な事になる?」


 「……」


 彼の言葉を聞いていると頭にモヤがかかったみたいにハッキリとしない。


 まるで触れてはいけないものだと頭は理解していて、答えを拒否するかのように。


 僕が『呪い』について、考えれないように、すぐに忘れてしまうように―――


 事前に、そう作られているみたいに―――


 けど、ジッガ・ヤンは椅子に戻り、再び資料を広げる。


 「さて、君の証言で気になる事がある」


 「それは、なんでしょうか?」


 「うむ、君の性格についてじゃよ」


 「性格?……ですか?」


 まさか、『呪い』の話から、僕の性格についての話に移行するとは思ってもいなかった。


 しかし、なぜ?


 「さて、君の性格について不自然さを感じる事がある」


 「はぁ」と僕は気の抜けたような返事を返した。


 性格について言われるとは思ってもみなかった。


 いや、これが英雄を判断するため面接なら、むしろ重要なのか?


 けど、ジッガ・ヤンの言葉は―――


 「君には自分の性格や思考が他者から操られている実感はあるのかな?」


 ―――予想外だった。



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