第71話*

 あなたは敢えてゆっくりと歩みより、騎士の置物から剣を取り上げる。鎧には錆が浮いていたが剣は鈍い光を放っていた。あなたは剣を体の正面に構える。慣れた刀とは感覚が違うが贅沢は言っていられない。大男も手斧を体の正面に掲げた。

「いざ、勝負!」


 大男は大きく腕を振りかぶると水平に薙いでくる。あなたは剣を合わせつつ勢いを殺して手首を返して大男の手元を狙う。大男はパッと飛び退ると大きな歯をむき出して笑った。

「意外にできるじゃないか」


 大男の膂力を生かした斬撃とあなたのリーチの長さを生かした受け流しからの反撃の攻防が続く。お互いに小さな傷をいくつか負ったところで正対し睨みあいとなった。お互いに息が荒い。


 大男が間合いをつめて頭上から振り下ろそうとした刹那、あなたは今までのように受けようとせず、全身でぶつかるようにして刃を横に構えなおし剣を突き出した。刃は肋骨の間を抜けて大男の胸を貫通する。剣から手を離して横に飛びのき、斧が振り下ろされるのを避けた。大男の口から血が溢れ、どうと倒れた。


「くく。まさか、このような加護を受けた剣を放置しておくとは、我が主も良い趣味をしておいでだ。戦士よ。たいしたものだ。貴様なら……」

 大男が咳き込み血を吐く。

「我が主の相手に相応しい。寄り道をせず3階に行き、そこで主に打ち倒されるがいいだろう。我が主は強いぞ。敵わぬというなら正面玄関から帰るがいい。警備システムを解除する暗証番号のヒントはeXItだ。そうそう、この先の左の部屋には寄るなよ。あの女どもなぞに……」

 大男は最後に大きく体を痙攣させると息絶えた。


 あなたは剣を引き抜いて改める。刃は鋼のようだが、横の面に別の金属で何かの文字が象嵌してある。du et m。あとは摩耗したのか取れてしまったのか読み取れないが、なんらかの加護があるようだ。あなたは掘り出し物に勇気を得て先へと進む。


⇒第32話に進む

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890935249/episodes/1177354054890935908

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