第28話*

 パスコードを知らないあなただったが別に途方には暮れなかった。ここを出入りする者はあまりこういった装置になれていないようだ。0から9までの数字の欄のうち4つだけが手垢か何かで汚れている。汚れ具合からほぼどういう順番で押しているのかが推測できた。あなたは4桁の数字を押して、入力のボタンを押す。 


 あなたは呼吸を整えると扉を押し開いた。どうやら正しい番号を当てることができたようだ。あなたの目の前に広がる部屋は豪勢なものだった。毛足の長いカーペットが敷かれ、ソファやテーブルも明らかに値が張りそうである。壁際の台には大型の液晶テレビが置かれていた。


 テレビからはサッカーの試合の映像が流れている。映像だけで音声はでていない。その光の届くぎりぎりの部屋の奥には天蓋付きの巨大なベッドが置かれていた。そして、そこには一人の男が座っている。端正な顔つきで、あなたのことを値踏みするように凝視しているように見えた。


「部屋に入る前にはノックするのがマナーだと思うがね」

 男は嘲るような口調で言った。


⇒第46話に進む

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890935249/episodes/1177354054890936005

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