神様(仮)達の日常

葛葉 玖辿(旧シナチク)

4月

新学期だからと言って良いことがあるとは限らない



「うわぁぁああああっ!!」


走る走る走る。


何故かって?逃げる為だよ!


俺、幸神 万さちがみ よろずは新学期にも関わらず通学路を思いっきり走っていた。


もちろん遅刻しそうだとかそういう理由じゃない。


俺は今、追いかけられている。


え、何か落としたのを届けようとしているんじゃ無いかって?


絶対違うね。


何故って――追いかけて来てるの、お化けだから。


目からは橙色の光が光線のように飛び出し、頭には角があり、全体的に色が黒く、動いているのを抜きにしても形が定まらない。そして何より、足が人間よりも圧倒的に速い。


はい、どう見ても人間では有りませんね。ちくしょう。


しかもこのお化け?は普通の人には見えない。霊感が無いと無理だ。


だから普通の人から見ると、俺はさけび声を上げながら走る狂人に見えるだろう。


…こら!そこの女子高生二人!俺を指差してコソコソ話すんじゃ無い!こっちは命かかってんだぞ!


そう、お化けに触られると高確率で命を落とす。


俺はこの目で何回か見たことがある。人がお化けに触られて命を落とすのを。


事故、他殺、自殺、色々だ。


だから俺はお化け、幽霊、妖怪などのよく分からないモノは嫌いだ。怖いから。


ってヤバイ!そろそろ追い付かれる!!このままじゃ死ぬっ!!


『ケケケケケケッ』


あと少しでお化けの手?が俺に届く――という所で。


『クケェッ!?』


「ちょっと退きなさいっ!」


誰かが俺を突き飛ばした。


助かった――と思ったのも束の間、俺は突き飛ばされた体勢のまま避ける事もかなわず、街路樹に頭から突っ込む。


『ゴンッ』


という良い音を鳴らした俺は、そのまま気絶した。







人の縁とは奇妙な物で。


俺と彼女の運命は、本来とは違う方向に逸れて行く事となる…。


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