ショートストーリー すき、に宿る魔法。

 よくある表現は、先生と生徒。優しいもんね、でもやっぱり顔かも? クラスの女子みんなから人気。




 教育実習。黒板に大きく書かれ、遠目から見れば親子のような年齢差。担任は実習生の背中をバンバンと叩いて、変に張り切っていた。

 普段のつまんない朝のHRから一転、話し掛けたくて、どこか落ち着かないクラスメイト。席替えをしてもよく寝るからと、強制的に前列となった男子も今日ばかりは目の奥を輝かせている。


 1週間。その間、私たちのクラスに居る。すこし言葉を詰まらせ、ギクシャクな自己紹介が、自分たちの感覚とリンクした。


 休憩時間が来るたびに、実習生の周りには、生徒でいっぱいになった。


 帰りのHR終了後は、ひとり々の顔を見ては「気をつけて帰ってね」と付け加えた。教室の戸が人で溢れている、待ちぼうけの私に、声が掛かった。様子を伺いながら……その行動が、特別に思えた。



 代わり映えの無い1日が、楽しくなっていく。相手は気にしなくても見た目を変えたくなる。どんなに小さな事でも知りたいのに、近すぎると気にしてないフリ。




 はじめは長いかも、なんて思ってたくせに、最終日が迫る頃には好きになってる。このままクラスに居て欲しい。


 初日から変わらず、ひとり々を見て挨拶してる先生。終わりだから少しでも長く話したい生徒や、記念に写真を撮る人も。


 黒板の隅、日直欄。木製の棚があって実習生が飾った花、制服のポケットからスマホを出してカメラを開いた。自然と撮りたくなった。

 良い感じに撮れた、待ち受けにしよう。


「最後だし、先生も記念に撮ろうかな」


 私の手元へ寄せてきた、そっくりの待ち受け。先生には記念でも、私にとってはお揃いで。


 理想の大人だったから、居て欲しい? それとも──

 帰り道、夕やけの空に、いくつものシャボン玉。ふわりと上がっては、すぐに消える。子どもたちが楽しそうに遊んでいた。

 どこかで会えるだろうけど、学校には来ない。はじめから終わりを知ってたから、寂しさはあってもその空白を埋めようと無意識に考えてる。




 また、つまんない日が戻ってくるだけだ。群がって花の世話をしていた女子は、ぱったりと無くなった。なんか都合良すぎ? 私も花が好きというわけでは無いけど、気になる人が大事にしていたから。

 ただそれだけで、日頃の行動を変えちゃう私も、都合が良いやつなのかな。






***

 目覚めよ、妄想力! というわけで短編を書きました。


 基本インドアだから、本当に仕事と家の往復になったって何も変わらんわー……そう思っていましたが、限度があるな。おバカな事してリフレッシュしたい。


 ……とだけ書いておこう。




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