32石 20万人記念配信 後半

32石 20万人記念配信 後半




 資金のことについて考えていると画面にエルミナからのメッセージが表示される。

 内容は『そろそろ後半にいこう』だそうだ。

 確かに時間的にも話の流れ的にも丁度良いか。


「さて、話の区切りも良いしそろそろ次の話にいこう」


『次の話……』『つまり?』


「もうひとつの重大発表をするぞ」


『うぉぉぉぉぉ!』『ついにか!』『サムネのシルエットの正体が!』『さけるイカ:誰だろうなー』『新メンバー?』『だよな?』『まだ分からないゾ』


 当然、リスナーは気になっているな。

 良い感じに盛り上がっている。


「皆の者の中でも薄々勘付いている者もいるようだな」


『ってことは……』『やっぱり……』『ゴクッ……』


「今回のチャンネル登録者数20万人突破を記念して新メンバーを発表する!」


 その瞬間、今日何度目かのコメントの爆発が起こる。


『おおおおおおおおおおおおおおお!!!!』『やっぱりきたあああああああああ!!』『新メンバー!!』『さけるイカ:やったあああああああ!』『新メンバー新メンバー新メンバー』『当たったわww』『ゲストとか言ってた奴ww』『ワイは信じてたで!』『でも新メンバーって誰だよ』『誰だ誰だ!』『流石にウルオメア様並みのクオリティーは無理だよな?』『それはあり得ないだろ』『マジで誰がくるんだ』『新メンバーはよはよ!』『この瞬間を待っていたんだ!!』『すいませ〜ん、新メンバーなんですけど、まーだ時間かかりそうですかね〜?』『ファンはせっかち』


 コメントが爆速で流れていく。

 その爆速コメントを見ていくと、どうやら新メンバーのクオリティーを心配しているリスナーが多く居るようだ。

 だが、安心しろ。

 なんせ本人だからな。


「では、皆の者も気になっている新メンバーに登場してもらおう」


『ワクワク』『ドキドキする……これって恋?』『ボケる余裕がある奴居て草』『あくしろよ』『あほくさ』


 余はレイラに見るとレイラは頷いた。

 準備は万端だ。


「新メンバーの……レイラだ!」


 余の言葉とともにレイラが余の隣にやってくる。

 その瞬間、あれだけ流れていたコメントが一度止まった。


『さけるイカ:ヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』


 嘘だ。

 ひとりだけコメントしてる奴が居た。

 楽しそうなのは良いが、お前は自重しなくていいのか?

 コイツが1番配信を楽しんでそう。


「皆さま、初めまして。ウルオメア様のメイドをしておりますレイラです。よろしくお願いします」


 レイラがそう言って軽くお辞儀をする。

 その瞬間、当然のようにコメントが爆発した。


『うっっっっっっっっっっっっそだろお前!!!』『ファーーーーーーーーーーー!!』『う、美しい!』『あり得ないだろ……』『これマジ?』『夢じゃないよね?』『やっちゃあああああああああ俺の推しきたあああああああああああ!!!』『レイラぁぁぁ!』『よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!』『メイドきたあああああああああああ!!』『これ本当に現実?』『夢だゾ』『マジでリアルなの?』『VTuberじゃないよな?』『メイド検定1級のぼきゅの目から見ても1流のメイドさんなのが分かるにょ!』『頬をつねったけど痛い。現実だわ』『メイド検定ってなんだよ』『さらっとやばそうな奴居て草』『綺麗すぐる』『ウルオメア様に負けてないぞ』『誰だクオリティー低いとか言った奴』『緑の髪が自然すぎる』『ええやん』『メイド服クンカクンカ』『美しすぎる』


「いえ、ウルオメア様のお美しさには敵いません」


『あら謙虚』『ステキ』『結婚してくれ』『声も完璧で草すら生えない』


「すみません。結婚はお断りさせていただきます」


『草』『わざわざ反応してくれたコメントがそれで草』『うわああああああああああ;;』『振られてて草』『ざまぁww』


 そろそろ余が話していいか。


「さて、皆の者は驚いてくれたか? 満足してくれたか?」


『そりゃもちろん!』『モチのロン』『満足れす……』『さけるイカ:ふぅ……』『当たり前ですわ』『そうですわゾ』


 どうやらリスナーたちは十分驚いて満足したようだ。

 まぁあれだけコメントが爆速で流れていれば分かるが。


「うむ。今後レイラはこのチャンネルのサブメンバーとして活動してもらうぞ」


『了解ー』『はーい』『あくまでメインはウルオメア様な訳ね』


「そういうことだ。なので、毎回出る訳ではないことは理解しておいてくれ」


『はい!』『りょ!』『あいあい』『毎回出て欲しい』『ずっと見てたい』『しょうがないね』


 では、事前に決めていた設定を話そうか。


「さて、まだ時間があるのでレイラがどうやってこの世界に来たのかを説明しよう」


『お? 設定か』『設定きたな』『レイラはロールプレイでいくのね』『このチャンネルは基本RPなんじゃないの』『把握』『おk』『レイラも謎の穴じゃないの?』


「皆の者も知っているように余は神な訳なのだが」


『そうだよね』『そっか神様だったっけ』


「この世界でどこまで神の力を使えるのか試していた時に元の世界との繋がりを感じることが出来た。それを詳しく調べているうちに元の世界から誰かを召喚出来ることが分かった」


『fmfm』『マジ?』『召喚か!』


「ただ、元の世界から誰かを召喚するには余の魔力が足りなかったのだ。そこで魔力の回復を待つことにした。しかし、この世界では魔力の回復速度が遅いので時間が掛かったのだが、先日ついに元の世界から誰かひとりを召喚出来るだけの魔力が回復したのだ」


『ほほぉー』『はえ〜』『さけるイカ:そういうことだったのですね!』『それでレイラを召喚したのか』


「余が召喚出来るのは元の世界で余との繋がりがあり、なおかつこの世界に来ても良いと思っているものだけだ」


『なるほど』『このチャンネルはファゴアット帝国だから他のキャラクター出す訳にはいかないわな』『なんだ王国のキャラクターは出ないのか』


「誰を召喚するのか悩んだのだが、最初はレイラを召喚することに決めた。レイラの元の世界への執着がほとんど無かったからな」


『あぁ……』『そういえばレイラってそんな感じだったよなぁ』『ウルオメア様を失ってからヤバかったから』『タオス2期のレイラはマジで可哀想で見ていられないからな』『タオ手ではたしか旅に出て行っちゃったんだっけ』


「そんな訳で先日、レイラをこの世界に召喚したのだ」


『はーなるほどねー』『召喚か。良い設定だな』『夢が広がる』


「ウルオメア様に召喚されて、お側に居れる私は幸せです」


 そう言ってレイラが優しく微笑む。


『ウッ……』『尊い』『やばい泣きそう』『トゥンク……』『原作しってるとマジで涙出る』『惚れたわ』『ワイ、陥落』『マジで尊い』『お前のことが好きだったんだよ』『尊みが深い』『たすかる』


「ちなみにレイラは余のメイド兼秘書として働いてもらっているぞ」


『いやウルオメア様の秘書ってレイラだったのかよ!』『え、マジで?』『設定なのか本当なのか分からん』『ちょっと待て。レイラが秘書ならレイラもナンパされたのでは?』『レイラがウルオメア様とRD社に一緒に行った秘書なの?』


「うむ。レイラとRD社に一緒に行ったぞ」


『……ギルティ』『ナンパ野郎アウト』『絶許』『殺意の波動に目覚めそう』『こんな美女ふたりによく声を掛けられるよな』『確かに度胸だけはありそう……まあ許さんが』


 どんどんナンパ男にヘイトが集まって可哀想だが、まぁ特定はされないだろうし許せ。


『あーマジで会いたかったわ』『ウルオメア様とレイラが歩いてたら街中でめちゃくちゃ目立ちそうだけど』『ツブヤイターに目撃情報流れそうだよな』『ちゃんとモラルは守れよ』『流石にコスプレなら普段は違う姿でしょ……だよね?』『見つけたからって安易に情報は流すなよ。これでウルオメア様が配信辞めたら恨むからな』『だめだぞぉ♡』


「そうだな。まぁ多少は仕方ないが、街で見かけても出来るだけネットに情報は流さないでくれると助かる」


「お願いします」


『はーい』『あい』『分かりました』『当たり前だよなぁ?』『さけるイカ:ウルオメア様を困らせた奴は僕が潰す!』『任せとけ』


 まぁここまで配信で明かして、それなりに有名になったのなら余とレイラは発見されても構わない。

 エルミナのことがバレたとしても配信で新メンバーだと紹介すれば良いしな。

 そこでエルミナからメッセージが飛んでくる。

 どうやらツブヤイターでレイラこともトレンドに載った&終了時間らしい。


『初見』『ファッ!? なんでレイラが居るんや!』『こんな配信やってたのか』『完全に出遅れて理解出来ない』


「どうやらレイラのこともツブヤイターのトレンドになったようだ。そこから来た者も居るようだしな」


「私がトレンドですか。ありがとうございます」


『確かに初見っぽいのも増えた』『レイラのお礼助かる』『すげーな』『この配信どこまでいくんだ……』『もうどこまでもいきそう』


「余もどこまでもいきたいところだが、残念ながら終了時間がやってきた」


『えー』『やだぁ』『いかないで』『耐久配信しようず』『体感時間1分』『いかないでくれぇ』


「悪いな。レイラ、最後に一言頼む」


「そうですね。これからもウルオメア様の応援をよろしくお願いします」


『おう!』『当たり前や!』『さけるイカ:任せてください!』『俺はレイラも応援するぞ!』『俺だって』『最後までレイラっぽい』『RP完璧だな』


「次回の配信予定はまたツブヤイターで告知するからな。では、これで配信は終了する。最後に言っておくがチャンネル登録とツブヤイターのフォローをよろしく頼む」


『おk』『した』『もうしてる』『友達に紹介するわ』『切り抜きしたいゾ』『サークルで広める』『まだ切り抜くほど配信してないからなぁ』『同僚に宣伝しておく』『宣伝にはなるだろ』


「ではな」


「さようなら」


 余はドヤ顔をかまし、レイラは軽く頭を下げて配信が終了した。


「おっけぇ。終わったよぉ。ふたりともお疲れ様ぁ」


 エルミナが笑顔でそう言ってくる。


「うむ。レイラもエルミナもお疲れ様だ」


「はい。お疲れ様です」


「師匠、どんな感じだったぁ?」


「特に問題はありませんね」


 まぁレイラなら緊張などしないだろう。


「それでエルミナの目から見て、今回の配信は成功か?」


「もちろん成功だよぉ! 最後なんて視聴者数は8万人を超えてたし、現時点でのチャンネル登録者数は24万人を超えてなお増加中なんだぁ」


「それはすごいな」


 もう24万人か。

 なんかもう30万人いきそうだな。


「30万人になったらエルミナの発表か?」


「うーん。30万人にはすぐいきそうだし、流石に期間が短すぎるからもうちょっと先かなぁ」


「そうか」


 確かに期間が短すぎるか。


「なら、今日はもう作業は終了して休もう。次の予定は明日以降にゆっくり考えようか」


「はぁい」


「かしこまりました」


 こうして20万人記念配信は大成功で終わり、余たちはその結果に満足して休むのだった。

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