第25話エミリアの占い アッシュの奇行
「小僧、当然だが小娘の【占い】が当たってから要件を聞くよ」
「そのつもりだ」
アッシュはカポーニの話に頷く。
「ボスそんな約束ちしまっていいのかよ!占いが当たったったら出ていくことを要求するはずに決まってる!!」
モブ兄が抗議する。
「逆に協力を要請することも考えられるぜ」
タンクトップ男も意見する。
「黙ってな。小僧の要求も含めてゲームだ。どういう結末になるか楽しもうじゃないか。小娘占いな!」
口が裂けるほどの笑みと鷹のような獰猛な目をエミリアに向け命令する。
心底この展開を面白がっているようだ。
「こうなったらダメだな・・・」
とタンクトップ男が呆れたように呟く。
大した求心力だとアッシュは思っていた。
確かに目の前にいる女は迫力とオーラを持っているが、それだけで野蛮そうな男たちをまとめ上げることが可能なのか不審に思った。
隣のエミリアは顔を青ざめさせながら、目を閉じて集中している。
客間には静寂が訪れた。
「すーー・・・・・はぁ~・・・・すーーー・・・はぁ~~」
エミリアの呼吸が少しずつ荒いものへと変化する。
額にはじんわりと汗が浮かんでいる。
なにやら海の底へでも潜っているような様子だ。
その姿に部下たちは薄っすらと浮かべていた見えを消す。
エミリアの放つ雰囲気にただならぬものを感じているようであった。
少し俯き気味な顔からは苦渋の表情が覗く。
「うぅ・・・・どういうこと・・なの?・・あなたは・・・・カポーニじゃ・・・ない・・?」
一言発した疑問を含む答えに場が緊張感を増す。
アッシュの後ろからは息を飲む声が聞こえてきた。
モブ弟のものだろうか?
半眼でどこにも焦点の合わないエミリアの瞳。
目の前の女を見るともなくボーっと見ていたが、その後ろの人物が不意に動いたため釣られて目を上げる・・・・
「・・・・!?・・・ダメ~~!!」
急に意識が引き戻されたかと思うと、エミリアはソファから立ち上がり悲鳴のような叫び声を上げて、飛びかかる。
その思いも寄らないエミリアの行動に、後ろに控えていた部下たちは反応が遅れる。
エミリアの目指した相手はカポーニではなく、後ろに控えるスーツ姿の少女だった。
自分の横をエミリアが通過していったが、カポーニは別のものに気を取られていたようで、こちらも反応が遅れる。
唯一行動したのはオーバーオールの女だった。
咄嗟に突っ張りのように手を突き出してエミリアを突き放そうとする。
その大きな手はエミリアの右頬を掠めただけだった。
エミリアはスーツの少女に覆いかぶさる。
その姿は身を挺して守っているかのようにも見えた。
そして変化はそれだけではなかった。
いつの間にかアッシュはソファから離れドアに一番近い女に向け刃物を突きつけていた。アッシュは眉間にシワをハッキリと刻み、一部の隙きも見逃さない凄まじい形相をしていた。
刃物はTシャツの内側、腰にあたりに隠していたようだ。
アッシュとエミリアほぼ同時に行われた奇行に、カポーニファミーの部下たちは一拍遅れたものの、瞬時に行動する。
「こいつらをぶっ殺せ!!」
モブ兄が叫びアッシュを引き剥がそうと手を伸ばす。
エミリアに至ってはオーバーオールの女に髪を捕まれ苦しそうに呻いている。
「ジーン!クラウド!止めな!!そしてクラド!ギル!動くんじゃないよ!!」
カポーニの大きな声が客間に轟く。
ジーンとはオーバーオール女の名前らしく困惑しながらもエミリアから手を話す。
クラウドがモブ兄の名前のようでアッシュのローブに掴みかけた手を停止させる。
名前からクラドがモブ弟でギルがタンクトップの男のようだ。
「なぜだボス!!こいつらの行動はただの反抗だ!!」
ギルが噛み付く。
「それを決めるのはあたしさ。それにあたしの【契約】も反応したからね」
その一言に部下たちは愕然となる。
アッシュとエミリアはその意味が分からず疑問が浮かぶ。
そしてアッシュに刃物を突きつけられていた女は、カポーニのその一言を聞くと膝から崩れ落ち放心したように項垂れるのであった。
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