英雄がダンジョンをクリアしたせいで、俺は大変な目に遭ってるんだが!?

若宮ナオ

第1話 英雄の誕生

一攫千金を狙い無数の冒険者が、ダンジョン攻略に夢中になっていた。


突然街中に現れたダンジョンの最深部に、お宝があると噂されていたからだ。


しかし、凶悪なモンスターが大量に湧くダンジョンをクリアするどころか、何百年も最深部に辿りつける者さえいなかった。


そんな時、いつも現れるのは"英雄"である。


誰も到達出来なかった最深部にあっという間に辿り着き、お宝を守っていたドラゴンを死闘の末、倒してしまったのだ。


ここまで聞くと、英雄が難易度の高いダンジョンをクリアした美談に聞こえるかもしれない。

しかし、英雄の誕生によって大変な目に遭っている人だっている。


英雄がダンジョンをクリアしたせいで、冒険者が来なくなり、管理を任されていた役所は赤字に苦しみ始めたのだ。


ダンジョン周辺の警備や近隣住民からの苦情の対応。増えすぎたモンスターの腐敗臭やうめき声も酷かった。

何も生み出さないダンジョンだが、管理費用だけはバカみたいに掛かる。


そんなダンジョンの再建を突然押し付けられた、不幸な男。

アレス・テイラー。

ダンジョンが現れたエリアの役所に勤めており、遅刻の常習犯。いわゆる問題児である。

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