カルセドニーダンジョン⑤


「シンシアさん、これ先に切っておきますね」


「お願いね、水よ!お水はこれを使って足りなかったら私に言ってね」


私は二人が料理を作ってる所をただ見てるだけだった……二人には悪いけど、退屈だ……


「それじゃあ、私はスープを担当するからナユナさんは、他をお願い」


「はい、それじゃあ、わたしはメイン料理を作りますね」


うーん、やっぱり退屈こんな時にスマホがあれば……そうだこんな時は最近ちゃんと話してなかったクロと話そう!


《クロ、起きてる?》


《ZZZ……》


まさか、クロ!今まで話しかけてこなかったのは、ずっと寝てたからなの?


まぁ、マラカイトでクロの鞘を作ってないから騒がれるよりはいいけど……

でも、起こしておくか、明日から本格的にダンジョン攻略して行くしね。


私は前みたいに、拳にバリアを張り巡らせて思いっきりクロを殴った!


「にゅや────────!!」


その時にガコンってかなり大きな音と……あとクロの悲鳴が辺りに響き渡った……


『なんだ!今の音と悲鳴!』


『まさか!魔物でも出たのか!?』


『もしかして、魔物が湧き出したのか!』


周りの人達がビックリしたみたいでざわざわしだした、やばいこれは、ここでクロを起こすべきじゃなかった。


「今の音ってりんさんの方からしたような……あっまさか!」


「えっ!どういう事?ナユナさん」


ナユナが私を見ながらシンシアさんに何か話していた。

あぁ、ナユナは私がこの前みたいにクロを起こした事がわかったんだね。


そんな中、周りの人達が


『魔物が湧いたみたいだぞ!戦闘準備をしろ!』


『とりあえず剣だけ持っていけ!俺が魔法で援護するから』


『どうしよう!もう防具脱いじゃったわよ!これじゃあすぐ魔物狩りに行けないわ!』


と次々に周りの人達が戦闘態勢に入りだした。


やばいよ、やばいよ!早く謝らないと大変な事になるよ……あぁでも、こんな大勢の前で話すのって、初めてだから、身体が震えてきたよ……くっ!腹を決めろ!私!


「……あぁ……あの……」


ダメだ!声が震えて大きな声が出せないよ……


「皆!静まりなさい!今の音は魔物じゃないわ!」


『あれは!ダンジョンマスターのシンシアじゃないか!』


『あれ?あの人ジルコンの受付の人じゃないか!?』


『おぉ!あれがSランクのシンシアか!』


『Sランクなんて初めて見たわ!』


「皆!騒がせてしまって、ごめんなさい!私の仲間が転んでしまってその時に大きな声が出てしまったのよ。本当にお騒がせして、ごめんなさい!」


シンシアさんが私のせいでみんなに大声で謝ってくれていた……よし、自分がまいた種だ、声が震えててもいいから、みんなに謝らないと……


「すっすみません!わっ私が大声を出しちゃったせいで皆さんを驚かせちゃって……本当にごめんなさい」


私は言葉を噛みながら謝罪を言って思いっきり頭を下げた!


『いや、いいよ、俺達が勝手に驚いただけだからな、なあみんな!』


『そうだな、冒険者を何年もやってるのに魔物と子供の声を間違えるなんてな』


『確かに、だから坊主そんなにあやまらなくていいぞ』


と冒険者の人達が口々に私を許してくれた。なんていい人達なんだろう。


「皆さん、ありがとうございます」


私はまた思いっきり頭を下げた。


シンシアさんのお陰でなんとか、私がやった事が大事にならなかったけど、シンシアさんにもちゃんとお礼を言わないと。


「シンシアさんありがとうございました、あとごめんなさい」


「いいわよ。と言いたい所だけど本当に謝らないと、いけないお方がいるんじゃないかしら」


本当に謝らないといけない方?……あっ!


《りん!酷いよ!殴っておいてオイラを忘れるなんて!》


《ごめんクロ!今度から気をつけるから》


《りん……なんかオイラだけ扱い軽くない?》


ギック!こういう時だけ感がいいなクロは……


《ちゃんと謝ってるじゃん、許してよ、クロは寛大な神武なんだからさ、このくらい大目に見てよ》


《しょうがないな、わかったよ!オイラ寛大な神武だから許してあげるよ!》


チョロいなクロは。


この前は運よく人が居なかったから、大きな音を立てても、大丈夫だったけど、今度からクロを起こす時は人が居ない所で起こさないとな。


「りん君ちゃんと黒金様にちゃんと謝らないとダメよ」


「あっ、いま念話で話してちょうど許してくれたところです。お騒がせしてごめんなさい」


と私が言うとシンシアさんの様子がおかしくなった……


「くっ!……私も黒金様とお話がしたい……でもここでお話をしてしまったら、自分が抑えられなくなるわ……りん君、私!黒金様が近くにいると自分が抑えられなくなるから、夕食が出来るまで離れててくれる!」


「えっわかりました!大広間の扉の辺りに行ってますね」


「お願い、夕食を作ることに集中したら、邪念が消えると思うから」


私は急いでシンシアさんから離れて大広間の扉の隅で座って待つ事にした。


「はぁー、シンシアさん大丈夫かな」


私は独り言を呟いたら。


《オイラあのエルフ苦手だな》


私の呟きにクロが応えた。


《あのエルフじゃなくってシンシアさんだからね。クロ、それにしても、なんでシンシアさんが苦手なの?》


《だって、シンシアってオイラを見る目がギラギラしてて怖いんだもん。さっき、りんがシンシアに背を向けた時に凄いギラギラした目で見てたんだよ。オイラの事》


それはちょっと怖いけど、シンシアさんってヴェルザンディ教の熱心な信者みたいだから、ヴェルザンディ教に関わるクロなんか見たら、前世で例えたら好きなアイドルを街で見かけた感じの状態なのかもな。


《あっそれより!なんでいつもオイラを起こす時殴るの!オイラが折れたら、りんだって困るんだから、やめてよね!》


《あれはごめん……でもクロも、いつも話しかけようとする時、寝てたりするんだもん、しょうがないじゃん》


《わかったよ!もうあんな起こされ方はやだから!ずっと起きてるよ。それにオイラはりんを導く役目があるからね!これからビシバシとアドバイスしてあげるね!》


えぇ……それはちょっとうるさそうでやだな……


そんな事をクロと話していたら、ナユナがこっちに向かって来て


「りんさん~!」


「ナユナどうしたの?」


「夕食が出来たので呼びに来たんですよ」


どうやら、夕食が出来たみたいだ、それを聞いたらお腹がグ~ってなった、ナユナに聞かれてないといいけど、お腹の音を聞かれるとちょっと恥ずかしいからね。


「そうだったんだ、わざわざ呼びに来てくれてありがとう」


「いえいえ、それじゃあ行きましょうか」



さてと、ナユナとシンシアさんはどんな料理を作ってくれたんだろう、楽しみだな~

私の食いしん坊キャラは相変わらず継続中みたいだ。

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