第302話下調べ

喫茶店は明るい店内でお洒落だった。


メニューを見るとこれは?ポルトガル?いやスペイン?




我が国がフランスとイタリアの良いとこ取りな国なのでアーシェンバードはスペインとポルトガルの良いとこ取りなのかもしれない。


何故ならメニューにカステラあるし。魚介系多いし。これはパエリアだな。


相変わらず変な世界だ。隣同士の国とかなら解るんだが。ヨーロッパのご茶混ぜ感。で、何故かアメリカっぽいパルドデア。




カステラとパンと珈琲を注文。取り敢えず本タイプの地図をひらく。


此処が音楽ホールだから今はこの辺か。


城発見。やっぱり車じゃないと遠そうだ。国の情勢を昼間に聞けそうな所か。




うーん。そうだ大学にしよう。留学の下見とか言って誤魔化せそうだし。


此処から1番近い所は国立アーシェンバード大学。1番良い大学っぽいな。




それにしてもカステラ懐かしい。日本のとは形が違うけれど。美味い。




喫茶店を出て大学へ。


時短の為にタクシーを拾う。




「アーシェンバード大学まで。」


「お兄さん留学生かい?」


そうか。タクシー運転手って言うのも聞けそうだ。




「いや、まだ何処の国にしようか決めている最中です。アーシェンバードはどうですか?住みやすいですか?」


当たり障り無い感じで話を進める。




なるほどね。




その後大学でも似たような話を聞けた。




・・・・・・・・・・・・・・・・




「会長、お帰りー!良かったよ!市民楽団!」


ロビーで待つ会長を発見した。


ボードウェン国立管弦楽団程では無かったが結構良い演奏会だった。特に金管楽器の音が良くアリアでは金管の学科が無いのが残念なくらいだ。やっている奴がいたらかなり感動しただろう。




「お疲れ様。話を聞きたいですね。」


王子は会長の仕入れたネタの方が興味ある様だ。




バスに乗り込みホテルへ向かう。


ホテルは首都一の大きなホテルらしい。アーシェンプラチナムホテル。何とも豪勢な名前。




気になる部屋割り。


観光シーズンオフと言う事もありホテルは貸し切り状態な様だ。いや?権力で貸し切りにしたのかも?


財閥達は1人一室(勿論、別料金)、社長令嬢や子息達も1人一室を選んでいる者が多く私達は仲良く同部屋にする事が出来た。


半分はカイン生徒会長様の配慮だけれども。




キャサリン、エミリア、私。


王子、ルイス。


カイン、クライス、ジョージ。と仲良く一緒だ。会長は一人部屋を予約している。




「でっけー!!」


私がそう言うとルイスがゲラゲラ笑う。確かに庶民感丸出し。


ホテルは本当に国1番と言う名に相応しい大きさと豪華さ。


お洒落で豪華な外観。


1階ロビーもそれは一般人が泊まれない様な内装。高そうなシャンデリアと大理石の床。


教育の行き届いたホテルマン達。




先生が手続きを済ませ名簿に沿って部屋の鍵を渡される。




「じゃ、僕の部屋301に集合して下さい。」


荷物を置いたら王子の部屋に集合。


私達の部屋は211号室だった。




211号室はVIP部屋では無いのでそれ程広くは無いがベッド3つ余裕で置いてあるし。綺麗だし。


「うーん。風呂狭いわね。シャワールームしかないわ。」


「この時代にしては良いんじゃ無いの?」


「そうかあ。大浴場あるかしらね?」


うんうん。あると良いなあ。


「湯船には浸かりたいですよねぇ。」


エミリアもそう言う。我が国の風呂は日本と同じで湯船に浸かる。考えてみたらヨーロッパにしては変な文化だ。


こういう所がゲームの世界観が出ている。シャワーも果たしてこの時代にあったのだろうか?でも、そこは考えても仕方ない。




荷物を置いて王子の部屋へ向かう。




トントントントン!301号室をノック。


「いらっしゃい!」


王子がドアを開けてくれて中に入ると男性陣は揃っていた。




「部屋広い!」


やはり王子の部屋はルイスと2人といえど広い作りだった。


「適当に座って。」


ソファもあるしテーブルと椅子もあるし。広さ的には王家の客間くらいある。




「さてと。じゃ今日の話をするね。」


会長が話を切り出す。




「タクシーに乗ってアーシェンバード大学に行ったんだ。」


会長はタクシーの中で国は暮らしやすいかと聞いたそうだ。




アーシェンバードは良い国だと大学でも言われたよ。平和だって。会長は見たままだねと言った。




「ただね。タクシー運転手も大学でも同じ事を言っていた。お后様は弟を目に入れても痛くないくらい可愛がっているって。」


王子を筆頭に皆、面白くなさそうな顔をした。




「ダミアンは?国民にどう思われているんですか?」


王子が心配そうに会長に聞く。




「そうだね。頭脳明晰だけど笑顔が無い皇太子ってタクシー運転手は言ってた。嫌われてはいないみたいだけれど。」




国民って奴は正直だ。




「ダミアン、愛想悪いですからね。」


王子が溜息をついた。




「でもね。弟の評判が良い訳では無いんだ。これは大学で聞いた話。ヨーゼフ王子は小学生ながらモテモテで何時も婚約者以外の女の子に囲まれているとかいないとか?」


大学の購買の叔母ちゃんが噂だけど!!と話してくれたらしい。




「火のないところに煙は立たないと言いますからね。」


カインとクライスが目を合わせて頷き合う。




「なかなか困った王子みたいですね?明日の自由行動が楽しみになりましたよ。」


王子は不敵な笑みを見せる。ルイスも同じ様な悪い顔をしていて、そうだ。この2人って有難いくらい一途。




浮気性の奴って1番嫌いなタイプなのだ。




「小学生でその傾向があるって言うなら大人になったらちょっと危険よね。」


キャサリンが困った顔をしている。


「そうだなあ。大奥みたいなの作りそう。」


一夫多妻制をやりかねない。




「婚約者の子が可哀想ですね。」


エミリアがムスっとして言った。浮気性は女の敵だからなあ。




「まあまあ。落ち着いて。明日、本人を見てみようよ。本当にラッキーな日程だし。」


会長は苦笑しながら皆を宥める。




その後は会長にアーシェンバードの地図を見せて貰ったりして修学旅行で回るところの場所を確認した。


博物館から小学校までは割と直ぐに迎えそうだ。


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