第77話定期公演に行ってみる
公演は土曜日の午前中のチケットだった。
コンクールの歌練習をすると適当な嘘をついて1人で国立音楽ホールに向かう。
チケットは余るが誰か連れて行って巻き込みたくは無い。
エミリアを?とも考えたけどまだブルーさんも犯人では無いという確証が無いからだ。
皆、公演にはお洒落をして行く。上流階級らしい格好。そこは敢えての制服だ。敵にも解り易いだろうし。
ポケットには勿論、特殊警棒。
音楽ホールに着いて座席を確認すると割と見えるやや後方の真ん中辺りだった。
ドヴォルザークの新世界より。良いねー。好きだなあ。堪能させて貰おう。
特に此方を凝視している楽団員は見当たら無い。
でも、満員御礼の中で隣の席が空いているから解るだろうな。
ブルーさん、コンマス、指揮者以外は名前も不明。
こういう時に相手の出方を待てないタイプなので我慢するのに苦労する。
そう言えば演奏会後に握手会が開催されるらしい。
アイドルかよ!?と突っ込みを入れたい所だが我が国にはアイドル歌手とか居ないので管弦楽団やオペラ歌手がアイドルの様な扱いを受けている。
握手会って参加すべきなのかなあ。
面倒だけど勘違い野郎以外の楽団員に見られた場合って印象悪くなるよなあ。挨拶だけはしとくか。
演奏会後ロビーでの握手会はごった返っていた。
本当にアイドルだ。
握手会は誰が出てるかさっぱり解らないが全員では無い。
人気あるやつらだけかな。
「あら?アリア学院の?」
背後から女性の声がして振り返ると楽団員の女性奏者と男性奏者の2人組だった。
「聞きに来てくれたのね。ありがとう!」
そう笑顔で挨拶され此方も笑顔で頭を下げる。
「素晴らしい演奏でした。感動しました!」
楽団員のお姉さんが笑顔で
「握手会参加するの?」
と言われたが、面倒くさいとは言い難い。
「取り敢えずご挨拶はした方が良いかと思いまして」
と濁しておいた。
「先生には挨拶しておいた方が良いね」
楽団員のお兄さんにそう言われて案内される。指揮者の方は先生と呼ばれている様だ。
「先生。アリア学院の生徒さんがご挨拶をと」
お姉さんが指揮者のスミスさんに声をかけた。
「ご挨拶だけはと思いまして。素晴らしい演奏でした」
私はお辞儀をする。
「あー。先日のアリア学院の生徒さんですね。こちらこそありがとう」
と笑顔で挨拶された。
次いでに近くにいた楽団員の方々にも挨拶だけはしておいた。
数名に挨拶をした所でねっとりとした視線を感じ辺りを見回す。
今、誰か見ていた。
しかしそれらしき人物は居ない。
この挨拶した目の前の数名だけが除外か。全く、さっさと出てこいよなあ。
最後にファン多数でなかなか隙がなかったコンマスに挨拶をして帰る事にした。
ブルーさんには挨拶してないな。
結局の所、視線を感じただけで演奏会の収穫は無かったに等しい。もう少し殺気でも放ってくれたら解るのに!!
視線は音楽ホールを出る時にまた感じた。
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