第75話国立管弦楽団
国立管弦楽団。オーケストラや略してオケとも呼ばれている。
楽団に入るのはオーディション制で国中の奏者達のトップクラスの人材で構成されている。勿論、アリア学院の卒業生も多い。
給料制度で一般会社員より我が国では地位が高い。
約2ヶ月に1度の公演が超満員となる人気っぷりで今日の顔合わせも1月公演の合間に無理矢理ねじ込んた様だ。
練習は国立音楽ホール。
学校からは少し距離があるため1度集合して学校のバスで向かう事になった。
「えーと。今日の顔合わせの概要説明しますね。」
王子が座席の前の方で話し出した。
「僕が挨拶しますからその後で自己紹介お願いします。その後、楽団の指揮者とコンサートマスターから挨拶が有ります。他の方々は沢山いらっしゃるので自己紹介は行わないとの事。」
「後、演奏して下さるそうです。それで曲調などを掴んで2月までは自主練となります。以上ですね。」
指揮者とコンマス以外の名前が解らないのかよ。楽団って80人くらい居るよなあ。犯人探しが難航しそうだ。
「あっ!ルイスとルナリーは言葉使い、今回は特に気を付けて下さいね!」
隣同士に座っている私達は顔を見合わせる。
「めんどくせーな」
ルイスが呟く。でも、ルイスも管弦楽団の地位を理解しているので表立っての反論は出来ない。
素が出せないのは面倒だけど、闇討ち野郎にぶち切れた時の反応が楽しみだよね。
どうせ弱くてか弱い女の子とでも勘違いしてんだろうから。
音楽ホールに着いた。
此処に来たのは2回目だ。チケット代も高いし早々庶民が行けるものでは無い。音楽ホールは近代的な建築で斬新。それでいて上流階級が喜びそうな煌びやかな装飾。
ホール内は日本の映画館の様に後方に向かって傾斜があり後ろでも良く見える造りになっている。
舞台上には楽団員がスタンバイしており指揮者が何か話しをしている様だ。
「本日はお時間を作って頂きありがとうございます。」
王子が声を掛けた。
指揮者の男性が振り返り笑顔を見せる。
「ジェファーソン様、お久しぶりです。」
舞台上から彼は降りてきて王子に一礼した。私達も後方でお辞儀をする。
「初めまして国立管弦楽団で指揮者をしております。ダグラス・スミスです。」
年齢は30代半ばくらいのフワリとした茶髪で眼鏡の男性。
王子とは親しそうに話しをしている。国立なので当然と言えば当然。
指揮者に促されて舞台の下まで来て楽団の方々を見上げる。
「今回は共演依頼をお引き受け頂きありがとうございます。ジェファーソン・ボードウェンです。宜しくお願い致します。」
王子が挨拶をし頭を下げる。楽団員の方々は舞台上で立ち上がり丁寧にお辞儀をした。
私達もそれぞれ挨拶と名前だけの簡単な自己紹介を行い丁寧にお辞儀する。
楽団員の半数以上男性だ。見た目的には20歳~40歳くらいだろうか。闇討ち野郎の想像が全く付かない。
私達の自己紹介が終わると第1ヴァイオリンのコンサートマスターが立ち上がり一礼した。
「ベンジャミン・ジョンソンです。宜しくお願いします。」
私達も一礼した。コンサートマスター通称コンマス。この人も30歳くらいかな。金髪碧眼のよく居るタイプのボードウェン国民と言った感じの男性。
指揮者のスミスさんは舞台に上がられ演奏の準備に入った。
私達は客席の中央より少し前に座る。
本日の予定通り全て進められている。特に何の事件も起きそうに無い。
隣の席のエミリアが幸せそうに舞台を眺めている。おー!あの人だな。茶髪のサラサラの髪の男性。管楽器の2管楽器での演奏でスタメンってめっちゃ上手いんだなあ。
管楽器は2名~4名と変わるので今、この舞台に上がっていないメンバーを入れると国立管弦楽団は100人くらい居るんだろうなあ。
指揮者がスっと手を上げる。
前世でも知っていた有名曲、第九が披露される。
歓喜の歌。今回はカインが最初はソロだなあ。次のソロは会長かクライスか。女性は合唱のみでソロは無い。
流石、国立管弦楽団!上手い!
日頃、管楽器も弦楽器も聞き慣れているつもりだったが違う!
大迫力の演奏にただただ感動するばかりだった。
演奏が終わり拍手をする。変な事件さえなければ心から楽しめる共演となるだろう。闇討ちをされる可能性を入れても一緒に歌うのが光栄で仕方ない。
「本日は素晴らしい演奏ありがとうございました。しっかり練習して来ます!」
私達は楽団の方々にお礼を述べて国立ホールを後にする。
帰りのバスの中で皆は思い思いに演奏の話題で持ち切りだ。
感動したのだが。。
殺気も感じなかったしガン飛ばして来る奴も居なかったよなあ。
私の死亡フラグイベントとしては今日は不作だった。
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