第71話生徒会長の有難いお話
冬休みが始まった。
新年度に音楽コンクールのエントリーをしないといけない。
難易度高い曲でないと金賞は無理だろーなー。私は自室の勉強机に座って曲集をペラペラと捲りながら考えていた。
金賞は5名。1位から3位は表彰を受ける。後の2人は表彰はされない金賞。所謂ダメ金と呼ばれる。最低そこに入るのが目標。
予選で1曲。残れば本戦で1曲か。
トントン!部屋のドアがノックされた。
「なーにー?」
母だろう。
「アリア学院の生徒会長さんが見えてるわよ」
母がそう言った。生徒会長?家に?ちょっと驚いた。
玄関に出向くとラフな私服の会長が居た。
「会長ー!どうしたんすか?」
「近くまで来たから寄ってみた」
2階の自室に案内して母にお茶を持って来てもらうお願いをする。
会長にはソファに腰掛けて貰った。
母がお茶を入れて来てくれてからおもむろに会長は口を開いた。
「ルナリーって口堅い?」
「え?んー。堅いけどルイスには話しちゃいますね」
そう言うと笑顔で
「正直だね」
と言った。
「これから話す事は誰にも内緒。勿論、ルイスにもキャサリンにもね。」
会長はオンモードで冷静な顔で言った。
「解りました」
「ルナリーは転生者だよね?」
突然の発言に驚きで目が開く。その言葉が出ると言う事は。
「会長も転生者?」
会長は頷く。
「まじか!日本人ですよね?」
「そうだよ。乙女ゲームもクリアしてる」
衝撃発言に息を飲む。まだ転生者居たんだ。多すぎるこの世界。
「そして、キャサリンとルイスも転生者だね?ごめんね。直ぐ解ったけど今まで黙ってて」
会長は軽く頭を下げた。
「僕は伝説と言われている隠しキャラ。生徒会長ケビン」
ふふっと微笑む。
「隠しキャラ居たんだ!!!」
自分の子供の頃書いたノートは間違って無かった。
「本当はずっと黙って居るつもりだったんだけどね」
ちょっと悔しそうな顔をしている。
「穏便に平穏にこの世界を生きる予定だったんだ」
「でも、出来なくなった」
会長は真剣な顔になる。
「ストレス過多になったり危険な目に会うと前世の記憶って戻るだろ?」
私もそうだ。皆そうなんだ。
「今まで、全部の記憶を思い出してたと思っていたんだけどこの前のミサコンサートの緊張でね。まだ記憶があったんだ。」
会長は相変わらず真剣な顔をして徐に言った。
「ルナリーに死亡フラグが立っている」
嫌な予感が的中して私はうわーっと思わず声が出た。
「通常のゲームでは無くてね。アリラブがヒットした後に携帯アプリで配信された携帯版アリラブの中の話なんだけど。課金色が強くて攻略が難関過ぎるアプリでさー。」
「すみません!会長が何を言っているか意味が解りません」
そう言うと会長が首を傾げる。
「君、何時の人?」
「1986年頃死にました。ゲームはしてないです!」
会長の目が静かに閉じられた。
「そんな前の人なのね。携帯ないかー。ゲームもないのか。そりゃ解らないか。」
頭を抱えながら私に解る言葉で説明してくれた。
「何が死亡フラグかと言うと。国立管弦楽団との共演。」
コンクールでは無かったのか。あーそうか。コンクール前に死ぬって事かよ!
「ジェファーソンが共演を決めて来たと言った時は正直驚いた」
「共演に出ねぇ?って選択はないの?」
会長は首を横に振る。
「残念な事にルナリーはもう既にストーカーに目を付けられてると思う」
「ストーカーって何?」
いちいち申し訳ない。
はい。勘違い野郎に狙われているのか。
「ルナリーがストーカーに狙われるイベントは限定配信のやつでやってもやらなくても良かったんだけど。」
ちょいちょい意味が解らない。
「まあ、聞け!実際のゲームとは異なる所も沢山あるけど!もしもの為に教えに来たの!!」
会長に怒られた。先ずは聞こう。
携帯アプリ版アリア学院ラブソング
限定配信イベント
クリスマスミサコンサートにカイン、クライス、ケビン、ジェファーソン、ルナリーで参加。
そのミサ中に管弦楽団の1人に目をつけられたルナリー。彼は勝手に惚れ込みストーカー化していく。
それを知らないルナリー達は国立管弦楽団との歌の共演が決まる。
共演前に攻略対象者とラブラブが発覚したら攻略対象者が刺殺される。
共演前にストーカーへの対応を失敗したらルナリーが殺される
共演後にストーカーを追い詰めて警察に突き出せたらクリア
「簡単に言うとこんな感じだったと思うんだよねー。これ課金額が半端なくて攻略してないんだよ。」
会長は申し訳なさそうに言った。
共演前にラブラブが発覚したら?!
「ルイスが刺される?!指輪外さなきゃ!」
私がそう言うと会長は叫んだ。
「それ課金アイテムだから!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます