第59話鈍感どうしが気づく時


外に出ると夕日が綺麗だった。


ルイスは手を振り払わずに黙って着いてきた。




改めてルイスの顔を見る。怒ってる。




「ごめんなさい!私が軽率でした!」


頭を下げる。


「解ってる!でもイライラする」


ルイスが言う。


「あんな奴らに睨みを効かせる事もキレる事も出来ただろ?!」


「出来たけどしなかった」




「あーもう!!何時も何時も何時も!何でこんなに心配させる事ばかりするんだよ!」


ぐうの音も出ない。


本当にずっとそうでしたよね。




「狂犬ちゃんは何時も私を守ってくれた。私はそんな狂犬ちゃんに甘えてたよね。」


ルイスはふいっと横を向く。




「狂犬ちゃんに取って私は、、、夜叉の総長に言われて守るように言われただけの相手だったのにね。」


「それなのに、ずっと怪我させたり迷惑ばかりかけてた。」




「ごめん。ルナリーになっても全然、私、変わらない。何時もルイスに迷惑かけてばかりだ。」




ルイスは私をじっと見詰めて来た。




「なあ?本当にそれだけで守って来たと思ってんのか?」


ルイスが不機嫌そうな顔をする。


「うん。狂犬ちゃん義理堅いし」




ルイスは視線を逸らし溜息を付きながら一点を睨んでいる。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




鈍い。鈍すぎる。


俺の今までの態度が悪かったのかな。




反省すべき態度は多々ある。近づかれるとドキドキして距離をずっと取ってきたし。


触れられたら引き離していたし。




本当はもっと触れていたいのに。




あのまま何も知らずに夜を迎えて居たらどうなっていたんだろう。ルナリー達は夜、城を抜けて知らずに奴らと会って、、、。




想像するだけで、、、ギリっと拳を握り締める。




ダメだもう我慢出来ない。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ルナリー!」


急に叫ばれて私はビクッとなった。


「はい。。」




「目閉じて!歯食いしばれ!」


仕方ねぇ。落とし前とケジメは付けないとな。私はルイスに言われた通りに目を閉じてグッと口を閉じる。




ジャリっと足元の砂が鳴ってルイスが此方に近づいて来るのが解る。




フワッ。。柔らかい。温かい。


これって?!




殴られる!?そう思った瞬間に感じた。




頬っぺにチュって!?




思わず目を開ける。あっ。え??顔が赤くなる。




「バカ!目閉じろって言っただろ!」


ルイスが慌てて離れて目を逸らす。




頬っぺにキスされたぁ。


嬉しくて嬉しくて涙が自然と出る。




「ごめん。そんなに嫌だったか」


ルイスは泣いた私を見てまた勘違いをしている。




「お前こそバカ!鈍感!」


私は涙をグイッと拭いてルイスに抱きつく。


「前世と今世合わせて。今まで生きてきて1番嬉しかった!」




ルイスが抱き締め返してくる。


夕日が沈み外が薄暗くなる。私達はお互いに鈍感過ぎたのかも知れない。ずっと勘違いしていたんだ。




一番星が光る頃。


私は目を閉じる。


何も言わずにルイスは私にキスをした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「目を閉じて!歯を食いしばれ!」


俺はそう言った。


勿論殴る気なんてない。




ギュッと目を閉じるルナリーに近づく。


深呼吸して落ち着け俺!


唇に。と思ったが躊躇して頬に優しくキスをする。


柔らかい。




その瞬間ルナリーが目を開け顔を真っ赤にする。


「バカ!目閉じろって言っただろ!」


自分も顔が赤いのが解る。




どっどうしよう。ルナリー泣き出したし。やっちまったか俺。


「ごめん。そんなに嫌だったか。」




そう謝るしかない。




ルナリーがバカって言いながら抱きついてくる。


「今世と前世合わせて今まで生きてきて1番嬉しかった」




そう言われて自分の馬鹿さ加減が解った。


ごめん。勝手に自分だけが好きだと思っていて。


ごめん。一生懸命俺を振り向かせようとしてくれているのに照れてばかりで。


言えなくてごめん。




ルナリーが静かに目を閉じる。


ずっと触れたかった。その唇。


柔らかくて優しくて。




キスをして見詰め合うとやはり照れる。


「戻ろうか」


俺が手を出すとルナリーが腕にキュッと絡んで来た。


照れるんだよ!!




「あんまりベタベタするな!」


そう言うと


「あはははは!変わらなさすぎる!」


と笑っていた。




「ルイスー?」


「ん?」


「好きー!」


「ああ。うん。」


照れ隠しに頭をぐちゃぐちゃにしてやりながら城へ戻った。

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