小さな揺籃の島
風間エニシロウ
第1話発見
ある日
私がこの島に着いたのは一昨日。組織が所有していたものの、なかなか使う機会がなかった小型飛行船に乗ってやって来たのだ。最初、その話を聞いた時はちゃんと整備されているのか心配で乗っている間は気が気ではなかったが、今こうして無事到着しているので問題ないのだろう。後続の人間達も無事なことを祈る。
さて、先程記した通り、私がこの島に来て三日になるわけだが、今のところ資源らしいものは発見されていない。マナは大量にあるので採掘や計測用のマジックアイテムの動力は現地で賄えるので心配はなく、長期戦になるのは問題ない。元より三日などという短期間で見つけられるとも思っていない。しかし、とある発見を私はした。それをこの私的な記録として残そうと思う。
まず、この島は起伏のない平たい岩場があり、そこが我々の出入り口である発着場となり、拠点となっている。島の周りは高い崖でできている。岩場には小さな草が生えており、徐々に草原になり、すぐに鬱蒼とした森に入る。更に森の中にはいくつか洞窟があり、それは下に向かって続いている。
これを暮らしていた生物が居た名残ではないかと言う者も居る。今のところ、この島には虫や微生物以外の生き物が確認されていないのだ。おかげで食料はマジックアイテムの作る合成食か組織から送られてくる非常食・携帯食の類の二択を迫られている。ここでの暮らしの一番キツイところだ。
おっと、話が逸れてしまった。私のした発見について記しているのだった。
それを最初に見たのは、いや、それに気づいたのは森の中だった。何かないか、あわよくば食料となるものはないか探している時であった。この島の原生植物は未だ検査中で食べれない。新しく、もしくは既存の物と同じ植物を見つけたとしても、どうせ検査用のマジックアイテムの中に放られ、おあずけを喰らうことが分かっていても、何か瑞々しい食物が食べたくて仕方がなかった。都合よく見つけられたら、こっそり食ってやろうと、その時の私は考えていた。
そんな事を考え、木をよじ登ろうとした時だった。何か淡い光を見た。木々の下に生えた草の中に見たような気がしたのだ。それに気がとられた私は登り始めていた木から転倒した。慌てて起き上がり、先程見た草の方へ目を向けたが何もなかった。だが、不思議なことに私の中でそれは見間違えではなく、確かに見た確信のようなものがあった。私は這いつくばって草の中を、そこら中の草の中をくまなく捜した。
そして、草の根をかき分けて捜している内にこの島の地理がすっぽり抜けていた私は小高い崖から転落した。この島は発着場兼拠点となっている岩場以外は起伏に富んでいて、少しずつ高い崖が積み重なっているのだ。だが、そんな崖から落ちたにも関わらず、幸いなことに軽く頭がシェイクされただで外傷らしい外傷は擦り傷だけだった。しかし困ったことはあった。必死に地理も考えずに這いつくばって捜索をしていた私は完全に迷子になったのだ。どうしたものかと思い悩んだ。
そして、それを見つけた。ふわふわの淡い光。短く生えた草地に数個。ぴょんぴょんと跳ねている。手や足は見当らない。目や口も判別つかない。生物ではないのだろうか。だが、それは意思を持つ様に私の周りを跳ねる。私がぼうと見ていると、それらは規則正しく並んで一方向へ跳ねて行った。私は急いでそれらを追った。夢中だった。私が何かの第一発見者になったのではと興奮していた。それらを必死に追うと唐突にひらけた場所に出た。そして光達はさっと姿を消した。そこは発着場兼拠点の岩場だった。
呆然としている私に、仲間たちが心配そうに寄ってきた。どうしたのと問われたので崖から落ちたのだと伝えると慌てて医療検査をされた。連れていかれる際私は聞いた。
「何か見ませんでしたか?」
「怪我して帰ってきたお前以外何も。まだこの島では何も見つかりもしない」
検査の結果、脳の方にダメージはなく、擦り傷を負っただけだと判明しホッとされた。検査中の間も私はぼうっとあの光達のことを考えていた。誰もアレについて何も言わない。やはり、見なかったのだろうか。そう考えながらキャンプに着いた。そして、疲労と痛みを引きずった体のまま報告書を書こうとした。そしてまた、彼らと会った。
机に着いた途端、私のポケットの中から現れたのだった。そして私の周りを跳びはねた。何だかそれがとても愛おしく感じられた。
彼らが何なのかは未だ不明だ。だから、何か判明するまで私は彼らの存在を黙っておくことにした。可愛らしい彼らを少し独り占めしたくなったのだ。いつか何か分かるその時まで彼らは私の秘密だ。ので、この記録は私的な物に留めることにする。
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