第18話 外務大臣
そこに居たのは一人の背の高い、青年の美形の男エルフであった。
髪の色はエルフ特有の金髪だが、目の色はオレンジ色の様な茶色の様な色である。
彼はフレイヤを鬼の形相で見る。
「あ、ヴィルヘルミナ殿下とお客様は私の部屋に待ってて下さい。この『貴公子(笑)』を叱るので」
「へ、ヘルマンさん?それだけはご勘弁を………」
フレイヤは彼を観ながら何故か怯えながら青ざめ、冷や汗を掻いている。
陸軍大臣のフレイヤがまるで教官に怒鳴られる新兵のようだった。
「うるさい!今回は大事な会談だ。今からこっぴどく怒ってやるからな感謝しろ!」
そうヘルマンと言う男エルフは右脇にフレイヤを抱きかかえ運ぶ。
暴れるフレイヤをものともせず、笑顔でこちらを見る。
「ヴィルヘルミナ様、すぐに終わりますので椅子に腰掛けてお待ち下さい」
そう言うと、ヘルマンは歩き、エレベーターに乗り込む。
フレイヤは泣きながら大声で騒ぐ。
「ヴィルヘルミナ様!助けて下さい!!オレ死にたくない、まだ私、死にたくないよオオオォォォ!!!」
余程うるさかったのか、ヘルマンはフレイヤの首辺りを強く叩く。
フレイヤは電源を落としたロボットのように首をガクッと落とし、気を失う。
周りの外交官達を見ると、怯え震えている姿が目立つのであった。
「………あれ、大丈夫なのか?」
俺はフレイヤに対して心配になる。
だってあんなに怯えてるからな。
だがレナのフレイヤに対する態度は冷たく、鼻で笑った。
「安心しなさい、あれでも優しい方よ。本当に彼が怒った時は………」
レナは苦笑いをしながら話した途端、俺はそのレナの発言に寒気を感じ、自然に自分の体が震える。
そんな状況で部屋に入ると、ヘルマンという人は几帳面なのか、服が綺麗に畳まれ荷物や何もかもが綺麗なままであった。
奥の窓にはまるで絵画の様な景色であり、黄昏時の夕日に輝く黄金の草原と平地が広がり、それを囲むように高く美しく聳える山脈が連なっている。
レナは椅子に座って足を組んでいたが、レナが座った椅子以外の椅子は無かったので仕方なく俺はベットに座る。
ヴァイスも俺に付いてベットに来て、俺の腕に抱きつき、ピッタリとくっつく。
あの時は少しヴァイスが可哀想に感じたから良かったけど、今はレナが正面で睨んでいるからな。
「………ヴァイス、もう離れても良いんじゃないかな?」
「そうよ、もう十分でしょ!早く離れなさいよ!」
俺がヴァイスに尋ねると、突然レナが激しく怒る。
俺の為にヴァイスに怒っているのかもしれないが、正直そこまで怒らなくても良いんじゃないか?ただ腕を組んでいるだけだし。
「嫌です!というより、何でゲルマニアの姫様がそんなに私とカズト様の関係を必死に切り裂くのか、私には謎なのです!!」
「そ、それは………」
ヴァイスがそう言った途端、目が泳ぎ、困惑し始める。
だが、すぐに落ち着き、深呼吸をする。
「わ、私は……私はカズトに対しては心底嫌いとは思ってないわ、だから私も!」
そう言い、レナはヴァイスの反対側の自分の横に座り、俺の腕に抱きつく。
近すぎるのか、多少胸も当たっている。
俺はレナの突然の行動に慌て、動揺する。
「れ、れ、レナ!?」
「私もカズト様が大好きなの!私が先に出会ったんだから、貴女みたいな泥棒猫に盗られたくないわ!」
レナとヴァイスは俺を挟んで睨み合っていた。
俺は異世界ハーレムとまでは言わないが、俺を取り合っている事に何故か幸福感が感じられたが、反対に何か嫌なことが起こるのではないかと不安に感じるのも事実だ。
「だから、離れなさいよ!」
「泥棒猫じゃないですぅ!カズト様から名付けられたヴァイスという名前があるのですぅ!!」
レナはそれを聞くと、俺を睨む。
俺はその時に動物的本能が作動したのか、殺されると思い、必死に弁解する
「し、仕方ないだろ?俺と出会った時、名前どころか今までの記憶が無いから可愛らしい名前を付けただけだ!」
「ふーん、可愛らしい名前………ね?」
レナは微笑みながらこちらを見る。
俺は何故か冷や汗を掻き、胃がキリキリと痛み出す。
いや、今この部屋での状況でこうなったのだろう。
俺は余計な事でも言ってしまったのだろう。
というより、あの二人遅すぎるっ!一体どんな長い説教をしてるんだよ!?
心はもう不安で押し潰されちゃうよ!!
「なら、ヴァイスさんはメイドらしくメイドの仕事をすれば良いのではなくて?」
レナがそう言うと、ヴァイスは鼻で笑う。
「だから側に居るじゃないですか?もし何かあった場合の為に、それを言うなら貴女も姫らしい事をすれば良いのですよ、というよりあなたの家族はニホンジンとの恋愛を許してもらえるんですかね?」
「ぐっ……そ、それは………」
ヴァイスはそう言った途端、レナは困惑し目を逸らす。
するとドアノブの動く音がする。
ヘルマンが来た事に察知したレナは急いで先程座っていた椅子に座る。
ヘルマンとフレイヤが部屋に入ってくる。
フレイヤは目が死んでいて、まるで生まれてすぐの小鹿が初めて立った様な状態になっている。
レナは特に何の反応を示していなかったが、俺とヴァイスはドン引きした。
「ヴィルヘルミナ殿下、お久しゅうございます」
そう言って、ヘルマンはお辞儀をする。
「先程の無礼をお許しくださいませ」
「い、良いわ、別に。それにしても久しぶりね」
「はい、殿下」
レナがそう言うと、ヘルマンは何故か彼女を細目でじっと見ている。
「そして、君達が殿下をここまで送ってくれたのだな」
ヘルマンは自分達の方向に向き、お辞儀をする。
「あとフレイヤには少し体をくすぐっただけだから心配しないでね?」
だからって、あんな感じになるか!?
どう見たってあれは完全に何かをした事後だよねっ!
俺はもっとドン引きする。
だが、フレイヤは「くすぐり………嫌だ………。」と何度も泣きながら呟いていたため、少しだけ安心するが、くすぐりでここまで出来ることに恐怖を感じた。
「わ、私は関係ないですけどね!」
ヴァイスは力強く言う。
「それでも感謝を述べたい、本当にありがとう。」
ヘルマンは優しく接すると、ヴァイスはソワソワして喜んでいるように見える。
するとヘルマンは笑顔から真剣な顔をして、レナに顔を向ける。
「殿下、申し訳ありませんが、貴女とこのニホンジンの三人で話したいことがあるのですが………。」
「ええ、構わないわ。」
「ありがとうございます、それではヴァイス様とフレイヤには退室させてもらいます。」
フレイヤは敬礼をし、部屋を静かに去る。
だが、ヴァイスは自分から離れず横に座る。
ヘルマンは腰をかがめる。
「お嬢さんも退室を願いたいのだが。」
「イ・ヤ・ですっ!」
ヴァイスは強く反対し、自分の身体に抱きつく。
同時にレナの視線がキツくなっていく。
すると、笑顔で接していたヘルマンは真顔になり、声のトーンも落とす。
「早く退出しないと、先程のフレイヤの様にするよ………。」
「ヒィッ!?す、すみません、カズト様!!」
ヴァイスは驚き、すぐさま自分の元を離れ、物凄い速さで部屋から退室する。
ヘルマンはスッと立ち上がり、俺とレナを見つめる。
先程とは違う真顔でこちらを見つめる。
「殿下、カズト様、私は今から大事なお話をするので静かにお聞き下さい」
「私は分かるとして、何故カズトも関係あるのよ」
その通り、俺は特に何もしていないのに部屋に残る理由が分からない。
俺もヴァイスやフレイヤと一緒に出るべきである。
「いえ、先程言った通り、彼にも重要な話があるからここに残したのです」
「………重要な話って何よ」
レナがそう言うと、俺は黙って固唾を飲んで聞こうとした。
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