4 【第死(し)話】 (約1200文字) 【あくまのカード reverse】

【一口ショートホラー】

4 【第死(し)話】


【あくまのカード reverse】


 びっくりしましたよ、本当。

 あの人、いきなり私の家にやってきたかと思うと、死ねえ! って言いながらなんか変なカード投げつけてくるんですから。

 これできさまは死んだ! 死んだ! 死んだああああ! って、狂った笑い声を上げてすぐに帰ってくれたのが、不幸中の幸いかもしれないですけど。

 そのときの私はどうしたかって?

 どうもこうもありませんよ。

 ええもう、ほんとうにただ、ポカンとした顔をして見ていることしかできませんでしたよ。

 いやほんと、すぐに帰ってくれて、ほんとうに助かりました……。

 おかしいですよね、あの人。

 きっと頭が狂ってしまったんでしょう。


 え?

 ああ、カードですか?

 実はね、ここだけの話ですけど。わたし拾って見てみたんですけど、なんか変なんですよね、あのカードも。

 片面には絞首刑に使うような木製の台と、そこからロープで吊るされた人の絵が描かれていて、もう片面は何も書かれていない、というか……真っ黒なんですよ。隅から隅まで全部。一面。墨汁で塗りつぶしたみたいに。

 だから……その……もらってくれませんか? このカード。気味が悪くて。

 拾ってから色々な人に頼んでいるんですけど、みんな気味悪がって受け取ってくれないんですよね。……はあ……。

 お願いします。ただでとは言いません。お金もあげますから。

 だからどうか、このカードをもらってくれませんか。本当に心の底からの、一生のお願いですから……!


 え!

 いいんですか⁉ やっぱりあなたにお願いして良かった! あなたならきっと受け取ってくれると信じていましたよ、私。

 それじゃあ、これがお礼のお金で……。

 え?

 お金はいらない……? このカードだけでいい……?

 いえ、でも……。

 本当にいらないんですか?

 そんなに言うなら……。

 え? それと、一生のお願い、なんて簡単に言うもんじゃない?

 あはは、相変わらずおかたいですねえ。


 それにしても不気味なカードですよねえ。

 だってそのカード、なんか、その……見るたびに絵柄が変わっていっているような気がするんですよね。

 ほら、ロープが締め付けられている首のあたりが、だんだん赤くなっているというか……食い込んでいっているというか……なんか、もげていっているような……。

 ……少しずつ……少しずつ……。

 そんな気がするんですよね。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 ……あはは! きっと気のせいですよね! 気にしすぎですよね!


 あ、もうお帰りですか? それじゃあ近くまでお見送りしますよ。

 え? さっきから気になっていたけど、私の首にあるのは何かって?

 ああ、これですか?

 いえね、いつかは分かりませんが、どうやらたちの悪い虫に刺されてしまったみたいで。

 まあ、どうせ蚊でしょうから。何日か経てば治るでしょう。

 でも、自分でも少しだけ気になるんですよね……。

 最初は針に刺されたような小さな赤い点だったはずなんですけど……日に日に大きくなっていっているような気が……するんですよね……。


 ……少しずつ……少しずつ……。



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