人嫌い、テスト2日目

あの後、教室に戻ることなくファミレスでの勉強会を終えた秀人達は、すぐに解散し各自で頑張ることにした。秀人自信はこの2日目に不安はなかったので、帰ってすぐに寝た。


そして迎えた2日目のテスト。周りを見れば歩きながら教科書を開く生徒や、友達とどれだけ勉強したかを話す姿があった。


「…おは。」


「おはよう。」


「…勉強…いいの?」


「昨日それなりに教えてもらったからね。」


「…なる。」


「お、おはよう二人とも…」


「…すごい…くま。」


「い、いや寝ようとしたけど…悪い想像ばかりで寝れなくて。」


「それで勉強してたら朝になって、寝れないまま来たと。僕知ってるよ、そのタイプはテストで寝るんだ。」


「だ、だよね。始まるまで寝るよ。」


挨拶もほどほどに、席についた想汰は爆睡してしまった。テスト前に教師が起こすだろうが、あの様子だと本当にテスト中寝そうだ。


「…コーヒー…あげよ。」


「自販機にあったかもね。行ってらっしゃい。」


麗華が買いに行くと、秀人の周りには誰も寄ってこない。彼自身が周りと関わろうとしないし、ましてや1月の休学問題を起こした事もあって怖い人と思われていた。

秀人が教室で一人になれた場合、彼は小説を読むことにしている。それは図書室から借りたものであり、一週間という期限に返さなくてはならないためだ。


「おはよう。読書中に悪いわね。」


「何か用?お隣さんなら自販機の所だよ。」


「あら、借りたノートを返しに来たのよ。忘れたの?」


「そうだったね。」


「教えてもらえたけど、家でも予習したくて借りたのは正解だったわ。」


「じゃあもう用はないね。僕はこの本を読むから、何かあれば放課後にでも。」


「そうね。邪魔しちゃ悪いし、クラスに戻るわ。テスト頑張ってね。」


「…おは。」


「おはよう…ブラック飲めるの?」


「…私じゃ…ない。」


「じゃあ高山くんが?」


「僕はブラックだけど、欲しかったら自分で行くさ。」


「…ん。」


麗華が指をさす方を見る彩花。そこに爆睡している想汰を見て、麗華の考えが分かったようだ。


「なるほどね。」


「…飲む?」


「私はブラック無理なの。飲むとしたら、微糖が良いところね。」


「…じゃあ…秀人に。」


「今は本を読みたいから。」


「おはようございます!」


「ちょうどいい。彼に渡せば、この件は解決しそうだよ。」


「何か用ですか先生!」


「…大山…ブラック飲める?」


「いやー…自分コーヒーは苦手で!」


「…やっぱ…秀人。」


「はあ、分かったよ。それいくら?」


「…ルーレット…当たった。」


「つまり無料ですか!羨ましいです!」


「あの自販機で当てたの?ラッキーね、私もたまに使うけどかすりもしないわ。」


「じゃあもらうけど、この一杯で恩ができたとは思わないから。」


「…気にしない。」


もらったコーヒーを一気に飲みきる秀人。その姿を見た麗華は、次に想汰に渡そうと席へ向かった。


「…起きて。」


想汰を起こそうとするも、小さい声では届かない。


「…ヘルプ。」


「では自分が…起きてください!」


なかなかの声量。しかし想汰には届かない。


「そんな遠回りしなくても、これでいいでしょ。」


ふらっとやって来た秀人は、容赦なく想汰の頭を叩く。どのみち畑山がやっていたことだ。


「いったいな!」


「ほら起きた。」


「先生…あれはやりすぎでは。」


「…すごい…音だった。」


「な、何が起こったの。」


「…これ…飲む。」


「…ま、まさかそのために?」


「声かけても駄目だったし、どのみち先生が来たらこうなってたさ。」


「頭は平気ですか!」


「う、うん。」


「本気でやってたら、その程度じゃすまないと思うわ。」


「え、本気がいいの?」


「も、もう起きたから。コーヒーありがとう。」


「…礼は…いらぬ。」


「では自分、時間も怪しいので戻ります!また放課後に!」


「お互い頑張りましょう。」


大山と彩花が帰り、そのすぐ後で畑山が入ってきた。


「よーし。準備できてるか?」


短いホームルームの後、いよいよテストは始まった。想汰はもらったコーヒーと、秀人からのキツい一発のおかげで寝ずにすんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る