いつから味方だと錯覚していた……?

「じゃあ、気を取り直して……」


キリトが連れていかれたのはもはや避けようのない事態であった。

そう自分に言い聞かせて場を仕切りなおす。


「ここが七年生の棟だな。七年生ともなると学校で学ぶよりも実習などに出かけていることが多いのであまり活用はされていない。学年の生徒が揃うことなんてないんじゃないか?」

「卒業式の日でも?」

「そうだな。すでに何らかの現場で戦力として活躍している生徒も多いし、彼らの中にはどうにも都合がつかなくて卒業式に来られない者もいる」


特に珍しい話でもない。


「卒業式と聞くと、特別なものに感じる者が多いかもしれないし、その通りかもしれない。でも、人によっては現場での働きがそれよりも優先される場合もある。それだけのことだよ」


多くの場合、ここでいう「現場」とは軍であったり、警備隊である。

卒業式よりも現場での信頼が大事だというのも頷ける。


「他の棟よりは講演が多いのも多いのも特徴かな。各分野で活躍している人たちが来てくれるから、そのあとの道標になりやすい。コネクションもうまくいけば作れるかもな」


順に各棟を回っていく。


「もしかして、各学年に訓練場などがありますか?」

「その通り。学生の人数が多いから、数個じゃ賄えないんだ。F級とかだと生徒数が多すぎて一つあっても間に合っていないというのが問題だけど」

「いずれ分校もこのような形になるのですか?」

「いや、人数も違うからこうはならないだろうな……。みんなは一期生だから一気に教えてるけど、本来なら学年も違っただろうし、本腰を入れ始める来年からは教師の数も増えて学年ごとになるだろ? そこでの人数次第かな……」


とはいえ、ズンバ周辺の子供の人数は把握しているし、おおよそどのくらいが入学してくるかも試算してある。

ほぼほぼ予定通り進むだろう。





「先生!!」


三年生の棟に到着すると、待ってましたとばかりにウィルが飛びついてきた。


「……授業は?」

「中止にしてもらいました! こんな機会を逃すわけにはいきませんから! ね、リヒター先生?」

「あはは……」


わらわらと群がる生徒たちの向こうから出てきたのは幸薄そうな顔の白色ローブの男。

つまり彼が噂の俺の後任か。


「どうも、ライヤです」

「リヒターと申します。お噂はかねがね……」

「どうせろくな噂じゃないでしょうね」

「いえ、私はライヤ先生の二年後輩でして。学生時代から多くのうわさを聞いてますよ……。ドラゴン討伐の逸話なんて最早伝説ですから」


若気の至りだな。


「というより、リヒター先生は教師一年目でS級の担任ですか? かなり期待されているのですね」

「謙遜ではなく、それほどでもないです。どうやらこの人事もひと悶着あったようで……。何かと目立ったライヤ先生の後に就きたい人なんていなかったみたいで……」

「あー……」


数少ないライヤを認めていた人間はズンバに共についてきた。

つまり、本校にはライヤ肯定派は校長くらいとなったのだ。


「まあ、おかげさまで生徒が大変優秀で助かってはいますが……。私みたいなのでもなんとかやっていけている次第です」

「そんなことは良いのです! さ、修練場に行きましょう!」


ライヤ一行が向かうと、そこには見覚えのある生徒たちが。

というか、これ三年生のほとんどがいるんじゃないか?


「それでは! これよりライヤ先生とリヒター先生によるエキシビションマッチを行います!」


ワアアアアァァ……!


こりゃ見事な大観衆。


「どういうことだっ……!」

「リヒター先生がライヤ先生の実力を見てみたいとおっしゃっていたので特等席をご用意させていただきました!」

「学校でこんなことしていいのか!?」

「そこはライヤさん、あれをご覧ください」


ウィルがさす方向をライヤが向くと、特等席と思われる少し上等な席に座る校長とアンの姿。


しまった、校長も敵だったか……!




【あとがき】

めっちゃ時間空いてしまいました。

細かく読みやすいが信条なんですけど。

その看板も下ろさなきゃですね。

こんなに止まっていたのに待っていてくれた方、本当にありがとうございます。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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