体力と魔力

「魔力切れって不思議だよな。体力が切れたら気絶くらいするもんだけど、魔力切れで気絶するような例は聞いたことない。せいぜい過度な倦怠感に襲われるくらいだ。動けないって点では同じようなもんだけど、意識があるのとないのとでは天と地ほどの差がある」

「この惨状を引き起こしておいて何を言っているんですか!?」


魔力切れで地に伏す生徒たちの介抱に走り回っているヨルがいつになく真剣にライヤを怒る。


「惨状って……。全員が魔力切れを起こしてるだけだろ……」

「その状況がそうそう起こるもんじゃないって話です! 彼らたちほどの魔力が切れるってどれだけの魔法を使わせたんですか!」

「お、それを聞いてくれるか。魔法の面白いところでな。他人の魔法に干渉して制御を奪う分には自分の魔力をほとんど消費しない。だからこの貴族の子供たちが魔法を連発するのに合わせて俺が制御を奪い、不発させる。この人数に対して俺ごときがやっても足りるくらいにはな」

「そういう方法論を聞いてるわけじゃないです!」


あ、違った?


「これが効率がいいんだよ。ちゃんと全員の了承も得てるし。3時間も横になってれば動けるくらいには回復するだろ」


限界まで体力を消費すれば翌日なんて動けるものではないだろう。

筋肉痛だったり、筋の張りだったりいろいろと。

しかし、魔力は翌日には全快する。

その代わり、どれだけ酷使しても魔力量が増えることはない。

体力とは違って。


「俺とアンで実証済みだ。この方法によってまず間違いなく属性に関する苦手は消える」

「でも……!」

「強くなるためにはこの程度のこと当然のことだ。ヨルには苦労を掛けるが、頼む」





「ってライヤさんが言うんですよ!」

「うーん、まぁ一面では本当のことだからねー」


その日の夜。

フィオナの部屋にて。

かわいらしいパジャマに身を包んだヨルと、それ本当に着ている意味があるのかという露出とスケスケさを兼ね合わせているネグリジェを着ているフィオナ。

二人はベッドに腰かけてライヤの愚痴を言っていた。


「でも、あまりにも無茶をしすぎではないですか!?」

「そのくらいしないと、基準に達しないんだよー。彼らの魔法が拙いのはヨルもわかるでしょ?」

「それはそうですけど……」


ヨルとて回復魔法を扱うためにかなりきつい鍛錬を積んだという自負がある。

彼らがライヤやアンに追いつくためには並大抵の努力では到底届かないし、届くかもわからない。


「でも、あんなペースで皆さんがついてこれるとは……」

「そんなの当たり前だよー。ライヤやアンがどれだけおかしい存在かってことだよねー」


あんな化け物そんな簡単に生まれるわけないじゃん、とフィオナ化け物は笑う。


「そういう常軌を逸したところにいるからねー。ライヤにとっては、やり方を教えているだけなんだよー。それで、そこからやるかどうかを生徒たちに委ねてるの。やる気がある子は、あの二人にまで近づくことはなくとも、それなりのレベルにはいくだろうからねー」

「……」

「むしろ、先生としての領分は超えてると思うけどねー。ライヤなりにチャンスを上げてるってことだと思うけどねー」





【あとがき】

最近アニメって面白いんじゃね? とn回目の回帰を果たしました。


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