提案

皇子も気になるが、ライヤの意識はそれよりもその横に立つ男に吸い寄せられる。


「以前よりも腕を上げたようだな。素晴らしい。研鑽を怠っていない何よりの証拠だ」

「それでもあんたとの差が縮まったとは思えないんですがね……!」


皇子がいれば、護衛もいる。

もう5年以上も前となる戦争で顔を合わせた第二皇子付きの騎士、ランボルであった。


「それもそうだ。俺には膨大な魔力という才能がある。そのハンディキャップを覆そうというのだ。そう簡単に縮むものではない」


粛々と言葉を紡ぐランボル。


「だが、今やれば前よりもいい勝負をすると思うが?」


そう言うなり、ランボルからゴウッ! と凶暴な気配が漏れる。

すぐにライヤとフィオナがアンを守るように間に入り、身構える。

同時にキリシュも手を剣に伸ばし、すぐ抜けるようにしている。


「こらこら、今日はそんな物騒なことをしに来たわけじゃないだろ? あんまり好き勝手に動かれると僕も困るよ?」


だが、その気配はマリオットがランボルに声をかけたことで霧散する。

そう簡単に警戒は解けないが。


「しかし、こちらと組む価値があるかどうかの確認は必要では?」

「んー、そういう考え方もあるかもね。それで? 君の眼にはどう映ったのかな?」

「まぁ、及第点と言ったところでしょうか。以前よりも腑抜けていたらその場で斬っていましたがね」

「その後はどうするつもりだったんだい」

「どうとでもなるでしょう」


斬る対象だった本人たちを目の前にしてする話ではないな、おい。


「もう少し自分の騎士の手綱は握っておいてくれないか」

「無理な束縛は嫌いなのさ。ランボルもその方がやりやすいだろうしね」

「まぁ、それはもういい。それで、手を組むってどういうことだよ」


え? と、とぼけた顔をするマリオットにうんざりしながらライヤは続ける。


「さっきキリシュの対応が遅かったのは実際にはやらないだろうと知っていたからだろ。それだけでかなり信憑性が高い動きだ、さっきのは」


ちらりとキリシュライトを見ると、苦笑している。

そんな顔もイケメンだなこの野郎。


「じゃあ、単刀直入に言うよ?」

「あぁ」

「ここにいる面子で、帝国を内側からぶっ壊そう!」





「落ち着きましたか?」

「あぁ、うん。落ち着いてはいるんだけどな……。ちょっと脳のCPUが追い付かない……」


処理落ちだ。


「よし、もう一回言ってくれ」

「帝国をぶっ壊そう!」

「……」



意味が分からない。





[あとがき]

まだ今日です。

明日から6月という実感が湧きません。


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