手から出すとは限らない

遠巻きにライヤを見ながらじりじりと円を描くように動くエウレア。


「警戒心が跳ね上がったな」

「……当然」


エウレアにとって速さは最大の武器だ。

それに対抗されるとなれば迂闊には近づけない。


カンカンッ!


牽制として投げナイフを投げるが、パリッと音がしたかと思えば叩き落されている。

ライヤが一瞬で雷魔法を発動し、落としてからまた解除している。

ライヤとしては魔力量に不安があるので致し方ない動きではあるのだが、余裕があれば発動しっぱなしの方が簡単だ。

結果としてライヤはより難しいことをしていることになる。


バリッ!


雷を纏ってナイフと共に動き、足元はどうかと下段蹴りをしてみるが、次は足だけに雷を纏ったライヤは一瞬で横にずれ、不発に終わる。

雷豹もどうにかライヤの動きを制限しようと奮闘しているが、上手くはいっていない。

雷豹はもちろん雷属性なので素早いのだが、雷を纏った術者のように劇的に速くなっているわけではない。

どうしてもついていけない。


「……去年はしなかったのに」

「そりゃ自分のやれること全部出すやつはいないよ」


命が懸かってるならともかくな。


「さぁ、ここからどうする?」


エウレアを待ち受けるライヤだが、エウレアは冷静だった。

元々それほど感情が動かない質ではあるが、相手はライヤ。

格上なのは元々わかっていたことで驚いてなんていられない。


「……」

「持久戦か?」


先ほどと同じく、足で駆け回ってライヤを攻め立てるエウレア。

その顔に余裕はなく、真剣そのものだ。

対して、対処しながらも余裕があるライヤ。

効率的に魔法を発動しながらの応戦。


「凄い……!」


周りに控える生徒たちはその光景に見惚れる。

光景と評するのもおかしいかもしれない。

速すぎてほとんどエウレアの動きは見えないし、ライヤの位置がちまちまと変わっているから交戦しているのだろうと分かるが、見えるのは雷魔法の光と、2人の剣戟による火花くらい。


「……負けました……」

「うん、そうだな」

「「!?」」


そしてそんな様子を見ていた生徒たちは突然の降参に仰天する。

よく見れば、2人が剣を合わせているが、ライヤの脇腹のあたりから生えた氷柱がエウレアの喉元に迫っていたのだ。


「手とかからだけ出すのが魔法じゃないな。もちろん、魔法の発動位置が難しいっていうのはあるけど、やっていること自体はあんまり難しくないから。取り入れてみてもいいかもな」

「……ん」


ポンポンとエウレアの銀髪を撫で、下がらせる。


「で、最後だな」

「お手柔らかに」





[あとがき]

お待たせしました!

旅行のダメージ(?)からも回復し、今日から再開します!

すぐに引っ越しがあったりしますが……。


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