テストだから
「次は俺だ!」
イリーナの影におびえながら下がっていったキリトに代わって元気よく出てきたのはゲイル。
これで残りはウィルとエウレアか。
ここは予想通り。
「気合十分だな」
「もちろんです! このために1年頑張ってきたんですから!」
テストをそんなに心待ちにしている生徒も珍しくないか。
もちろん、実戦テストに限った話ではあるだろうが。
特別勉強が得意なイメージもないし。
「いきますよ!」
ゲイルの頭上に炎が浮かんだと思えば、急速に明るくなる。
カリギュー家の「極光の火炎」だ。
もちろん、ライヤも使ってくるだろうと予想していたので準備はしていたのだが、詠唱なしでの発動は予想していなかったので少しだけ対応が遅れる。
しかし、それは去年も同じ。
今年は土壁をより厚くして自らを囲う。
去年土壁を剣で突かれたことから学んだものだ。
ゲイルはその土壁に火を放つ。
出て来れば火に焼かれるし、出てこなくとも蒸し焼きになる。
ライヤならば炎の制御を奪って鎮火くらいはするだろう。
どちらにせよ突破されるのなら、こちらから動きを制限した方がいい。
そう思ってゲイルは待っていたのだが、一向にライヤが出てくる気配がない。
中に水や氷を張って耐えている可能性もある。
だから火を消すわけにはいかないが、こうも動きがないと心配にもなってくる。
「よぉ、油断したよな?」
「うぇ!?」
ゲイルが気づいた時には後ろからライヤの剣が首に回されていた。
他の生徒たちも燃え盛る土の中にライヤがいるものと思ってそちらにしか集中しておらず、どうやってライヤが出てきたのかわからなかった。
最初に気づいたのはエウレア。
「……なるほど」
「わかったの?」
「……土」
単語しか話さないエウレアの言葉だけでは気付くのに時間がかかったが、他の生徒たちも徐々に気づく。
ライヤの後ろ側の土の色が変わっていることに。
それはまるで掘り起こされたかのような色だ。
「そろそろ気付いたと思うが、俺はバレないように細心の注意を払いながら土の中を移動してきたんだ。誰かに気づかれればそこから違和感が伝わってゲイルにも気づかれると思ったからちょっと本気で制御した」
魔力制御は魔法の行使における制御だけではない。
魔法使用時の魔力の波長のようなものも隠ぺいできる。
この技術がなければ光魔法で変装していたり、姿を隠していても気づかれてしまう。
「そんな感じで、後ろまで回っただけだ」
「場外では?」
「場外なんてルールないだろ? それに油断してたのは本当だろ? 今回は地中から行ったけど、普通に姿を隠して近づいても良かったんだぞ?」
「そう言われると確かに……」
納得がいっていない様子のゲイル。
「テストだからな。終わりだ」
現実は無慈悲である。
[あとがき]
卒業旅行に行ってきます。
バイトできなかったからお金ないけど……。
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