魔物戦線

『重ねてご連絡いたします。体育祭は中止といたします。現在、魔物に不可解な動きが見られます。当学園の教員と王国軍で対処いたしますのでむやみに動かれないようにお願いいたします』


騒然とする会場にアナウンスが鳴り響く。


「先生たちは!?」

「続々と向かうとの声をいただいています。ただ、軍の方にも繋がりはしましたが当該地域の軍とは連絡がつかない模様で……」

「軍の人間が対応していて連絡がつかないならその様子が映っているはずよね。それがないのに連絡がつかないとなると、故意に放っている可能性が高いわ。発案は誰かはわからないし、どうやって実行しているのかも定かではないけれど、今はどうでもいいわ。先生たちが間に合う事を祈りましょう……」





「俺が一番のりかぁ……」


魔物が押し寄せる草原にニキーナ以外の教員で最初に辿り着いたのはライヤ。

体育祭で指定された範囲でも隣だったので当然と言えば当然である。


「で、あれを止めろと」


眼下に広がるのは全長5メートル程もある魔物が跋扈している様。

気も滅入るというものだ。

下にいる生徒たちは目の前に魔物たちが迫ってきてやっと怖気づいたかのように後ずさりをしている。

一度痛い目に合わせておいた方が世の中のためだと思う。


「今は先生だから、そうも言ってられないのが面倒なところよね」

「どこからこちらへ? アンネ先生」


そんなライヤの心の内を勝手に読みとって会話をしてくるアンネ先生。


「フィオナに言われてたからね。こうなるかもしれないって。そうなった時に動けるのは私でしょ?」

「普段のしゃべり方になってるぞ」

「……ともかく、抑えなければなりません」

「俺は無理だ。頼めるか?」

「無論です」


言うやいなや、アンネ先生の体から膨大な魔力が立ち上る。


「こういう時が私の本領発揮というものです」


ズズズズズ……。


魔物たちの更新による地鳴りとは別で地面が揺れる。

高さ10メートルにも及ぶ岩壁が魔物と生徒たちとの間に出来る。


「ここにつき次第狩っていくわよ」

「口調」

「……狩っていきますよ。準備はよろしくて?」

「そんなこと言ったことないだろ……」


意識しすぎておかしくなっちゃってるじゃん……。


「やるかぁ……」


渋々ながら、あれだけの魔法を使っても余裕そうなアンネ先生と共に地面に降りる。





甘く見ていた。

魔物を見たことはあったが、王都のすぐ外の魔物。

あれくらいなら自分たちで簡単に倒せるという自信はあったし、現に倒せていた。

だが、森から来た魔物たちは次元が違った。

まず大きさが違う。

500メートルくらい離れていて姿を確認できたことから気づくべきだった。

自分たちよりも遥かに大きな相手だという事に。


「し、死にたくない……」


戦う気力も失せ、目を塞ぐ。


「馬鹿! 諦めるな! 諦めるくらいなら私を……!」


ドウェインが座り込み、ニキーナがどうにか茫然としている兵士たちから逃れようとした瞬間。

目の前に巨大な壁が立ち塞がった。


もう見てもいないドウェインは遂に目の前まで魔物が来たのだと震えるばかりだが、ニキーナはその壁に目を見開き。

上空を見上げる。

そこには白いローブを着た人物が2人。


「良かった……、他の先生が間に合った……。ふん!」


壁の出現によってさらに緩んだ拘束をニキーナは振りほどく。


「家族の不始末は家族がつける……!」


そう意気込んで壁を超えたが、そこでは想像以上の人数が戦っていた。


「アンネ先生! もっと周りに気遣って戦ってくれ!」

「あんたたちが合わせなさい!」


白いローブを着ているのは2人。

Sクラス担任のライヤ先生と、非常勤講師のアンネ先生。

互いに叫び合いながら続々と進行してくる魔物を処理している。

アンネ先生が一刀で魔物を屠っていくのに対し、ライヤ先生は目やアキレス腱など一旦動きを止めてから処理していっている。


その2人が目立つが、その周りで軍の装備に身を包んだ50人ほどの集団が戦っていた。

ニキーナは見たことが無かったが、かなりの練度があることが伺える。


「私も役に立たないとね……!」


ニキーナは背中に担いだ戦斧を下ろす。


「どいて~~!!」


ズズゥン!


重さを活かした一撃はアンネ先生の鋭さで斬っているのとは違うが、重みによって一発で仕留めている。


「ニキーナ先生! 学園長が連絡がつかないって怒ってましたよ!」

「ごめんなさい! ちょっとトラブルに巻き込まれてて! 後から謝るから!」





「おい! 魔物たちが見えないぞ!」

「うちの子はどうなったの!?」


会場では映像に岩壁が出来て、奥の様子が見えなくなってからも会場では保護者たちが騒いでいた。


「映すなと言ったり映せと言ったり、勝手なものね……」


学園長は疲れていた。

もういっそ自分が戦場に出ていった方が気苦労がなくていいのではないかと思い始めるくらいには。


「学園長! ニキーナ先生の映像が動いています!」

「映しなさい!」


そんな時、元気になる情報が1つ入り、少し心が持ち直した。


『おりゃあー!』


映し出されるのはニキーナの視点の様子。

目の前の魔物が豪快にぶった切られる爽快な映像。


「きゃあぁぁ!」


一般人にとっては目の毒でしかなかったが。





[あとがき]

なんか週間ランキング異世界ファンタジーで200位以内に入ってます。

これは100位以内も見えるか!?


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