2人の養父

「それで、先生への苦手意識は取れたの?」

「そんなこと言っても……」

「王国民として生きていくんだから、先生とは良好な関係を築かないと」


キリトとミクが飛行魔法に行き詰まっていたというのは事実だ。

だが、それとは別の意図もあった。

ライヤとキリトの融和を図るためだ。

キリトとミクは諸国連合の出身とはいえ、一応は貴族。

対外的にはライヤよりも立場が上だったが、ライヤが貴族となったことによりそれもなくなった。

現状、ライヤと仲が悪いのは百害あって一利ない。

今まで一利あったのかと言われればまぁ別にないのだが。

プライドを守る一利があったくらいだ。


「先生が良い先生なのはもうわかってるでしょ?」

「まぁな……」


最初こそ反発していたキリトだが、ライヤの能力についてはもう疑いようはない。

ライヤには負けたが、同世代には負けないと思っていたキリトはエウレアにボコボコにされた。

鼻っ柱をポッキリと折られたのだ。

イリーナに負けた時よりも遥かにショックを受けた。

キリトは知る由もないが、元々エウレアは強かった。

それをキリトはライヤの教育の賜物だと勘違いしたのだ。


そして何よりライヤをキリトが評価したのは。

自分をイリーナの下につかせたことである。

あのままライヤに指導を続けられていたら自分はずっと反発を続けていただろう。

その自覚がある。

だが、より自分に年が近く、より容赦がないイリーナに叩き潰されたことによって謙虚に自分を見ることが出来るようになった。

そこまでライヤは考えていたわけではないが、結果としてプラスに働いていた。


キリトが教師を敬遠していたのは、今までに出会った教師が偉そうだったから。

そして、その「偉そう」がどこから来たかを考えると、出来ないことをさも出来るかのように言うというものがある。

もしくは自分が間違っていても間違いを認めない。

教育において上下関係は確かに大事だ。

上が下に教えるという構図の方が確かに教育はやりやすい。

だが、間違いを認めない教師に不信感を募らせた結果キリトはより学校から離れたのだ。


「そろそろ意地を張るのをやめてもいいんじゃない?」

「それは嫌だ!」

「はぁ……」


だが、男のプライドというものがある。





「よく帰ったなお前たち!」

「お養父さま……」


学園近くに用意された2人の家に帰ると、養父が待っていた。

今日は授業参観でもかなりの注目を浴びていたが、堪えていない様子。


「お前たちが無事にやっているのを見て安心したよ」

「お養父さまもお元気そうで何よりです」

「困っていることは無いか? 例えば、あの教師がお前たちをいじめたり、クラスメイトがお前たちをいじめたり……」

「そういったことはございません。よくしていただいています」

「そうか……。キリトも大丈夫か?」

「はい、問題ありません」


いつもは傍若無人に振る舞っているキリトだが、養父に対しては流石に丁寧にもなる。


「お前たちにお土産も買ってきたから。俺は明日には帰らなければいけないが、寂しがるなよ?」

「あ、それはないです」


何なら、ミクは養父に意外と厳しい。





[あとがき]

テレレッテッテッテ~♪

筆者は卒論を抱えたニートから真のニートへとレベルアップした。


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