王国の覚悟

新学期が始まってから10日ほどが経った。


「また来るね! ライヤもうちに来てね!」

「まぁ、気が向けばな」


学校の後、ミリアリアの見送りに駆り出されていた。

2か月にも及んだ聖王国の使節団が遂に帰る時がきたのだ。


「アンちゃんも、また来てね!」

「機会があればね」


犬猿の仲だったミリアリアとアンも2か月も接点があれば互いに譲歩もするもので。

実際はアンが毛嫌いしていただけなのでアンが丸くなったという表現が正しいか。


「それから! まだ諦めてないから!」


ビシッとライヤを指さし、ミリアリアが宣言する。


「あぁ、頑張れ」

「なんで他人事なのかな!?」


もちろんライヤもミリアリアに好意を向けられるのは嬉しいし、女性として認識してもいる。

ただ、天真爛漫なミリアリアと関わっていると何というか、妹がいればこんな感じかなと感じてしまうのだ。


「じゃあ、またね!」


聖王国の王女、ミリアリアは笑顔で去っていった。

ここ2か月、ミリアリアはライヤやアンと共に多くの王国民と関わりを持った。

王都を出るまでの間、各方面から聖女の帰還を惜しむ声が聞こえ、多くの人から見送られた。

その民衆に笑顔で手を振る姿はまさに聖女であった。





「で、なんで俺は連行されているのでしょうか」

「知らないわよ。私だって聞いてないもの」

「なんで理由を聞かずにとりあえず連れて行くかってなるんだ……?」


その2日後。

いつものようにズルズルとアンに王城に引きずられていくライヤ。


「折角ミリアリアが帰ったんだからゆっくりさせてくれ……!」

「あら、王の命令に背くの? 亡命する?」

「ミリアリアに感化されてんなよ……」


聖女であるミリアリアが聖王国に迎えてくれると聞いてからアンはいつにもまして亡命という言葉を簡単に口にするようになった。


「休日にすまんな。まずは聖女への対応、ご苦労だった」

「ほんとに……」


王からの労いにため息をつくライヤ。

もちろん、ミリアリアとの時間は楽しかった。

だが同時にとても疲れる2か月であった。

もっと新人教師には優しくしてほしい。


「まぁそう言うな。今回はお前にとっていい話だと思う」

「『いい話だと思う』……」


そう言った為政者の言葉がその通りだったことがあるだろうか。

王の人となりはある程度理解しているつもりだし、信用もしている。

だが、王の命で面倒なことをこれまでやらされているのもまた事実。

鵜呑みにはできない。

にこにこな王の隣の王妃も怖いし。


「正式に王国としてアンとの婚姻を認めよう」

「は?」


その瞬間、場の時間が止まったような気がした。





[あとがき]

短いですが話の転換点なので許してください。


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