追撃と癒し
「ヨル、お前は良いのか? 一発どころか、お前の独断でころ……。いや、半殺しくらいまでなら許されるぞ?」
殺すのは情報がなくなるからまずい。
情報を吐かせた後ならオッケーだが。
「既に半殺しみたいなもんじゃないですか。あれ以上痛めつけたら私が自分であのクズを治療しなきゃいけなくなっちゃいます」
「いや、まぁ、それはすまん」
こういっては何だが、ライヤは一発ぶち込んだことで一応満足した。
当事者なのはライヤではないし、妥当ではないだろうか。
だが、アンの怒りは留まることを知らない。
今も背後では鈍い音が響いている。
応援に駆け付けた部隊もあまりのアンの気迫に声をかけられないでいる。
「正直言うと、もう2,3日は我慢かなと思ってましたから。思ったよりも早くて嬉しかったです」
「そんなこと言うなよ……」
間に合わなかった身で何を言うかと思われるかもしれないが。
ヨルの中で捕まった時点で自らが犠牲になるのは既定路線だったという事。
あまりにも悲しいではないか。
「本当に、すまなかった。お前のお父さんからも任されてたのに……」
「本当に気にしないでください! ライヤさんのせいだったらお父様も怒ったかもしれないですけど、これは私のせいですから。命があっただけ儲けものです」
あくまで、そのスタンスでいくのか。
「ふぅ……、ちょっとはすっきりしたわ」
外出用の小綺麗な服と白い肌、そして純白の髪にまで鮮血を纏ったアンが帰ってくる。
どうやら満足したようだ。
「ヨル」
「はい?」
「ごにょごにょ……」
何やら耳打ちを始めた。
嫌な予感がする。
「これくらいやっても罰は当たらないでしょう?」
「なるほど……」
何かを吹き込まれたヨルはスタスタとイベリコの遺体(仮)の方に歩いていく。
「うわぁ……」
その時点で。ライヤには察しがついた。
「よっと」
軽い掛け声一発、ヨルがジャンプし、両足を踏み下ろす。
目標はもちろん股間。
部分的に回復させ、何度もその苦痛を味わわせているのだろう。
思わずライヤも股間を隠す。
「ほらほら、意識なんて失わせませんよ? アンさん、これ結構楽しいですね」
「そうでしょ? 潰れる感じが何とも言えないわよね」
男からすれば狂気の会話。
ライヤは大人しく嵐が去るのを待つしかなかった。
「ライヤさん、一緒にお風呂に入ってください」
「え、いやぁ……」
イベリコが連れて行かれ、ヨルやアン、フィオナと共に家に帰る。
「今日くらいいいじゃないですか」
「そうは言ってもさぁ……」
ヘタレと笑いたくば笑え。
こちとら童貞歴前世と合わせて36年ほど!
生半可な拗らせ方じゃないんだぞ!
「許可するわ」
「アン!?」
何か許可下りちゃった。
「ライヤはもうちょっと自分が遅れたことを悔やみなさい。あれほど自分に想いを向けてくれている子を助けられなかったのよ?」
「それはもうおっしゃる通りで……」
「ただし、条件があるわ。私も一緒よ」
「もちろんです! アン様を差し置くなんてことはしませんから!」
「いや、それだと単純に今まで避けてきているアンとの入浴も増えるだけで……」
「ねぇ、わたしはー? 役に立ったよねー?」
「……確かに良い働きでしたが……」
「なら、最後に駆け付けただけの王女様より低い報酬なんてことは無いよねー?」
「くっ……。いいでしょう。受けて立ちます」
「そう来なくちゃねー♪」
「いや、あのー……」
逃れられない桃源郷。
[あとがき]
個人的な話で恐縮ですが。
過去に股間に大打撃を受ける出来事がありまして。
男性諸兄であれば思わずヒュンと感じてしまうようなエピソードを持ってたりもします。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
良ければブックマーク、応援、評価、感想お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます