怪しい動き
「そんなことが……」
ライヤは寮へと帰還後、ヨルとフィオナにあったことを話す。
「もう、私が学園にいるのがバレたのでしょうか……」
最もショックを受けていたのはもちろんヨル、ではなく……。
「暗部が把握しきれてない、と? 職務怠慢にもほどがありますよねぇ」
いつものひまわりのような笑顔はどこへやら。
身元を偽っている諸国連合の人間という、明らかに怪しい人物を見過ごした暗部への怒りがにじみ出ていた。
ライヤは一応暗部に文句を言おうと思ってフィオナにもこの情報を伝えていたのだが、どうやら文句を言う手間が省けそうだ。
「俺の考えでは、学園も怪しいと感じているってところじゃないか? 学園の教師で簡単に接触できるのなんて俺くらいだからな。何かしら情報を得られるかもと思っての動きだろう。ヨルの所在がバレていたらもうちょっと大掛かりな仕掛けをしていただろうし。規模が大きくなれば暗部がそれを察知しないことは無いですよね?」
「もちろんです。今回はライヤの手を煩わせてしまい、申し訳ない」
「まぁ、どこかのタイミングでこうなるのはわかってたからな。ヨルが俺のクラスにいるっていうのはそういうことだ。ただ、ここまで早いとは思っていなかったな。やっぱ偽名にするべきだったか……?」
ヨルの行方が掴まれるまでもう少し時間がかかると思っていたのだ。
確証は未だないだろうが、同じ名前の奴がいるというだけで疑う理由にはなる。
「やっぱり、私閉じこもっていた方がいいのでは……」
「それを言うなら、最初からだ。もう2か月も登校しておいて急にいなくなったらうちの生徒たちが話題にするだろう。どこから情報が出るかわからないから、もはやいつも通りに登校してもらうしかない。それとも、登校するのは嫌か?」
「とんでもない! みんないい子たちなので、私も楽しいです。まぁ、テンションの維持が面倒ではありますが……」
「なら、いいだろ。当面の問題は今度の課外学習か。仕掛けてくるならそこだろうしな」
学園では年1回以上の課外授業が義務化されている。
方針として、平民の生徒たちには貴族の仕事を、貴族の子供たちには平民の仕事を体験してもらうようになっている。
つまりS
そうなると自然と警備が手薄な場所に行くことになる。
今年の一年S
以前のウィル誘拐事件は国の大臣が関わっていたからこそ成立したことで、他国の人間ともなれば足掛かりを掴むのも難しいだろう。
「とりあえず、学園長に掛け合うしかないな」
課外授業のどうこうなんて担任に一任される問題ではない。
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