第80話


「泉…はぁ、すき、すき、…ねぇ……好き」


「んっ、…結。私も好きだよ」


結はキスをしながら私に好きと何度も言ってくれた。それがまるでエッチの時みたいでちょっと興奮する。結はエッチの時くらいしかこんなに好きとは言ってくれない。結の本当の気持ちが伝わって嬉しくなる。結は何度かキスをして唇を離すと私を愛しそうに見つめた。


「泉…好き。本当に、本当に好き。泉が一番好き……誰よりも、何よりも…泉が好き」


「私も。私も結が一番好きだよ」


こうやって気持ちを伝え合うのはとても喜びを感じる。結の愛情は深くて大きい。私は結の頬を撫でてやると結は私の手を掴んで頬擦りをした。可愛らしい行動に胸が高鳴ってしまう。


「一番私を好きでいて。私の一番は全部泉にするから、泉の一番も私にして」


「うん。もちろん。私の一番はずっと結だよ。私は前からずっと結だけだから」


結の独占欲が嬉しくてまたキスをしてしまう。すると結はお返しのように腰に回していた私の手を取るとキスをしてくれた。


「泉と同じ……。ねぇ泉、…好きだよ。泉が好き。好き、好き、好き……私の気持ち……伝わった?」


「伝わってるよ結。私も大好きだから嬉しいよ」


「うん。……ふふ、また同じ…」


結が色っぽい表情で嬉しそうに笑うから私はもっと結に触れたくなってしまっていた。こんなに嬉しくされると落ち着いていつも通りじゃいられないんだ。

私は結に軽くキスをすると強く抱き締めた。それから結の耳を甘噛みしながら舐める。

結のいい声が聞きたい。


「結、……そんなに好きって言われると、私嬉しくなっちゃって……結が欲しくなっちゃうよ」


「はぁ!…んっあ!…んっ、やっ!だぁ……。ぞくぞくする……から…っん、泉……やめて……んっ…」


結は体を震わせながら私にしがみつくように抱きついてきた。やだって言っているのに言動が違う結にまたしても興奮してしまう。私は耳の穴まで舌を入れて卑猥な音を立てながら結の感じる耳を舐め回した。


「はぁ、これ……結感じるでしょ?……ビクビクしてるよ体……」


「あっ!……んっ…んっん……ダメ!……もっ、はぁん……んっ、あぁ……泉!…」


「気持ちいい?結これ好きじゃん…んっ……はぁ」


「ダメ……なの!……んっ感じ……過ぎるから……あっ!もう、やだ…んっん!…泉……やだぁ……はぁ」


嫌がるくせに私に助けを求めるように離れない結。私は最後に耳を少し噛みながら吸って離すと結の顔を覗き込んだ。もう感じて少し涙目になっている。そんな可愛らしい顔を見せられると襲いそうになってしまう。


「そんなに良かった?顔が蕩けてるよ結。可愛い」


私は頬に軽くキスをすると結は眉間にシワを寄せる。


「やだって言ったのに、するからでしょ」


「だって好きっていっぱい言ってくれるから何かしたくなっちゃったんだもん。私も本当に好きだよ結」


「……もっと言って……」


「え?」


結はちょっと不満そうに私を可愛らしく睨む。




「もっと好きって言ってくれないと……怒る」


もう顔も耳も赤くしているのに結は何を言っているのやら。結なりに仕返しなのか?仕返しにもなってない嬉しい流れは私をときめかせるだけで結は本当に可愛らしかった。私は怒られないように小さく笑いながら囁いた。


「好きだよ。好き。結が大好き。こんなに好きなの結だけだよ」


「……本当に?」


「本当だよ。結が大好き」


「……あっそう……」


ここでこんな反応をされても結の気持ちは手に取るように分かる。恥ずかしそうに視線を下げて素っ気ない返事をするけどそんな結が好きすぎて気持ちが溢れそうだ。


「もう怒らない?」


私は近かった距離をもっと詰めると結は視線を私に向けてくれた。


「……ムカつくから怒る」


「なんでよ。何か嫌だった?」


「違う。嬉しいけど恥ずかしい気持ちになるから……ムカつく。……バカ」


「もっと言ってって言ったの結なのに。でも結には沢山言いたいからいっぱい言わせてね」


顔をしかめる可愛い結に私は宣言した。理不尽に文句を言われたけど結のために言いたいのだ。この言葉は言っても言っても足りないくらいだから。


「……バカ。……でも、好き…」


「うん。私も好きだよ」


結らしい好きの言い方に微笑んでいたら結はおもむろに顔を寄せてきた。私はそれが何かすぐに汲み取って応えるようにキスをする。キスしただけで気持ちがさっきよりも強まる。


「……泉」


「ん?なに?」


「……したい」


結はただ唇を合わせただけでもう女の顔をしていた。結からこうやって求めてくれるなんて思いもしなかった私はぞくぞくする感覚に襲われる。ストレートな物言いは結らしくて、めちゃくちゃに激しく結を求めてしまいたくなる。だけど落ち着かないと、結に気を使わせる事はさせたくない。


「じゃあ、ベッド行こう?ここじゃ体痛くなっちゃうよ」


沸き上がる欲求を抑えながら優しく結に促してみたのに結は私の言う事を聞かなかった。


「やだ。ここでしよう?……私、待てない。……体が熱くて疼いてるから早くしたい」


結はそう言って私に否定させないように服を脱ぎ出した。結がもう待てないなら仕方ない。私は上半身裸になった結をソファに押し倒した。結が求めてくれるのに興奮してしまう。体が熱くなっているのは一緒だ。


「いつもより激しくしちゃうかも…」


私の本音に結は色っぽく笑ってくれた。





「いつも激しいくせに。でも泉らしくて好きだから…早くして?」



甘い催促は私を高まらせる。私はその通りだと思いながら笑ってキスをした。





お互いに激しく求めながらしたエッチは好きが溢れてしまって最初から最後まで興奮が抑えられなかった。結がいやらしく私を求める姿に胸が高鳴って、私は結に煽られて何回もしてしまった。


最終的に終わったのは夜になってしまったがバイト終わりよりは早い時間で安心する。結は泊まっていけば、と言ってくれたけど明日はバイトがあるし結はピアノがあるだろうから私は家に帰った。



家に帰ってからも嬉しい気分は抜けない。ちゃんとお互いにしっかり気持ちを確認して結の気持ちも知れた。このまま結を不安にさせないようにしないといけない。私よりも結の方が大事だから、結の気持ちを信じて大切にしていく。



その日から私の考えはかなり変わった気がした。結を本当に一番に考え出した私は常に結を気にかけるようになった。

結といる時はもちろん、いない時にはちゃんと逐一連絡をいれて結に前よりも好きと言うようにした。結はそれに照れていたけど前よりも私に好きと応えてくれて本当に嬉しく感じた。



そして中間テストに突入する。

中間テストは今回も結のおかげで難なく終わったけれど前よりも自主勉を頑張ったから結果が期待できそうだ。

浮かれた私はテスト最終日に琴美の家に遊びに来ていた。



「んー、どうしよう……」



その日の琴美は珍しく何か悩んでいるようだった。さっきまで琴美はヴァイオリンを弾いてくれたがソファに座った途端に唸るから私は不思議に思って尋ねた。


「なにかあったの?」


「ん?なにもないよ?」


聞いたのにいつもの笑顔で返されると調子が狂う。なにもなさそうに見えないけどどういう意味だろうか。更に私は聞いてみた。


「何か悩んでるんじゃないの?」


「んー、悩んでるっていうか……琴美うずうずしちゃって」


「……なにが?」


琴美を理解するには時間がかかる。一緒にいるのに私にはよく分からない琴美は笑いながら答えてくれた。


「結の家に突撃したくて琴美そわそわしちゃうの。泉も行かない?結と結のママに会いに行こうよ!」


結とは放課後別れたばかりなのにもう突撃しようとしていた琴美に驚いた。子供並みに単純な琴美に苦笑いしてしまう。


「いきなり行ったら結怒るでしょ」


今日から結はお母さん直々にピアノのレッスンを受けるのに、目に見えている事実に琴美は動じない。


「いつも怒ってるから平気だよ!ちょっと結の様子見ながら結のママに会って、結に謝って帰ればいいんだよ」


「まぁ、それは……うん。謝れば許してくれるとは思うけど……」


分かるけどすんなり頷けない琴美の説明はどうしたものか。ていうか、謝る前提の話だったの?そこにも驚いていたら琴美は立ち上がって私の腕を引いた。


「だから大丈夫だよ泉!結のママに琴美会いたいし、もしかしたら結のママのピアノ聴けるかもしれないから行かないと絶対ダメだと思うよ琴美!でも、まだ突撃するには早すぎる気がして……」


結が怒るとかじゃなく時間を気にしていた琴美に少し呆れる。突撃するのに時間を気にする必要があるのか?琴美はやっぱり変わっている。しかし、行ってみたい気持ちは同じだった。




「じゃあ、もう少ししたら行ってみる?」


私は琴美に乗った。これは結のお母さんについて知れる良い機会だ。みすみす逃しはしない。

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