ファンタジーな世界で定食屋をはじめました。 〜行って帰れる異世界ファンタジー〜

七三

第1話


40歳 とうとうその大台に達してしまった。

パートタイマーとして働いている自分はなんやかんやいままで務めた会社でパワハラやモラハラに近いことを受けてきて、いい加減色々と嫌になっている未婚のアラフォーだ。

今は仕事帰りにスーパーに寄ってそのまま自家用車に向かって歩いている最中だ。


そして、転職したいなぁと思ってはいるのでスマホで求人情報サイトに登録をして、メールで毎日受け取ってはいるが、選り好みをしすぎている自覚があるためなかなか転職に繋がらないのが現状ではあるのだが。


ピコンッという音ともに今日も求人情報が届く。


「どうせ、またいつも同じ内容なんだろうけれど・・・」


ボソッと独り言を呟きながら自家用車の中に入り、メールを開く。

内容はいつもと同じ、たまに新しい求人情報が入っていたりするがそうはいってもこれだ!!という魅力的な内容は少ない。


最後の方、ふと目に付いた求人情報にスマホを操作する手が止まる。


「なんだこれ?異世界で日本のご飯を普及しませんか?」


ふざけているのだろうか?そう思った瞬間、再びメールが届く音が鳴る。

そのメールを開いてみれば


【プロではなく、趣味で料理をされている方歓迎。家庭の味を普及しませんか?

異世界で、あなたの味を異世界に広めましょう!!切実に!美味しいご飯が食べたいのです!!調味料が塩とコショウだけなんてもう嫌だ!!焼いた肉に醤油ベースのソースをかけて食べたい!!!白いご飯に生姜焼きが食べたいのです!!私は!!切実に!!】


なんか後半に行けば行くほど悲痛な叫びに見えるこのメールはなんなんだろう?

そう思った瞬間、ふらっとめまいがして思わず目を閉じる。


めまいが収まり、目をそっと開けると、目の前に美女が微笑んで立っているではないか。

何度か瞬きをしても目の前の美女は消えない。


「あ、あの・・・?」


「ご飯がですね」


「あ、はい」


「美味しいご飯が食べたいんです。日本の家庭の味が好きなんです。生姜焼きとか好物なんです。」


美女から生姜焼きなんて言葉が出てくるとは、と思いつつ生姜焼きですかと返事をすれば、

生姜焼きですと頷く美女。


「貴女は作れますか?生姜焼き」


「はぁ、生姜焼きぐらいは作れますけど、ただ、自己流ですよ?」


「自己流だからいいんです!!こちらに台所がありますので、ぜひ!生姜焼きを!!」


グイグイと手を引っ張られて台所へ連れていかれる。

えー?なに?この状況。ちょっとついていけないんですけど。

そもそも自分は車に乗ってたよね?どうやったらこんな、えっと、大豪邸?というか古い感

じのオリエンタルな建物にいるのだろうか?


連れてこられた台所は現代日本の台所でしかも新品同様だ。


「あの、それよりも自分、家に帰る途中だったんですけど」


「大丈夫!!元の場所、元の時間にちゃんと戻すから!!だからお願い、生姜焼きを作って〜〜!!!」


最後には泣き出した美女さまに、なんというかかわいそうになってきたので生姜焼きを作ることにしようかと、とりあえず台所にある業務用の冷蔵庫の扉をあけて見る。


「おお、すごい」


思わず口をついて出る、なにせ冷蔵庫の中には食材がたっぷり詰まっているからだ、豚肉鶏肉牛肉、野菜も各種、魚に見たことのない調味料まで。


とりあえず、必要なものを取り出す、豚のロースにチューブのしょうが、醤油、酒、みりん。

周りを見れば小麦粉もあるし、調理器具もフライパンに包丁、まな板。

炊飯器を発見したがご飯は炊けていないみたいなので、まずは米を研ぐところからだな。


「うーん、炊飯器は五合タイプか」


「たくさん食べます!!」


手を上げてたくさん食べる宣言をする美女に苦笑してしまうが、まぁ、いいや、とりあえず五合の炊飯器で五合炊くのは実はあまりオススメしないから四合にしておこう。


さて、ではごはんから炊きましょうかと袖をまくり気合をいれてまずはしっかり手を洗うところからスタートしますよ!








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