2012.2.4 人間存在というのはそもそも孤独なものなのだ。
今日は父親が来た。いろんな話をした。楽しかった。いつもは果てしなく思える病院の午後の時間が、あっというまに流れていった。笑ったりもした。ほんとうに、楽しかったのだ。
でも、父親が帰ってゆくとき、私は静かに涙をこぼしてしまった。たぶん、3、4滴くらい。自分でも、少しおどろいた。だってその直前まで、私はまったく落ち着いていたのだから。
あれはなんの涙だったのだろう? たぶん、さみしさの涙。これからまた沈黙の世界へと帰っていかなければいけないという、どうしようもないさみしさ。
私は、つくづくさみしがり屋だ。この文章だって、圧しかかってくるさみしさに耐えきれなくなって書いているのだから。
でも、どうして私はこんなにさみしいのだろう? 週に一度は必ず父親が来てくれる。××さんだって風邪が治ればお見舞いに来てくれる。父親や××さんに電話することだってできる。病院だから、かならずだれかがいる。看護師さんやお医者の先生が来ることもある。大部屋にはひとの気配が充満している。ロビーに行けば、ちょっとした世間話をすることもある。私は、安心の世界に生きているのだ。安心の世界で、のんびりしてればいいはずなのだ。
でも、やっぱり、私はかぎりなくさみしい。
さみしくて、どうしようもなくて、さっきも少し、泣いた。
さみしいということは、孤独であるということだと思う。
私には父親も××さんも病院のひとたちもいるが、それでもなお、私は孤独なのだ。
当たりまえだ。人間存在というのはそもそも孤独なものなのだ。
この事実に対して、いまだどうすればいいかわからない私。どーすればいいんですかね?
孤独について考えるとき、私は絲山秋子の小説を思い出す。
まずは『エスケイプ/アブセント』。「不在」がテーマの小説だ。
ひとは、そこからいなくなれば、かならず「不在」を残すのだと思う。私にとって、「不在」というのはとりとめなくってとめどなくって、そのくせそこに色濃く残り、優しい毒みたいに私をどんどんさみしさの世界へとりこんでゆくもの。ほら、いまだって、父親がすわっていたいすに「不在」がたちこめている。この「不在」は、あすにならないと消えないだろう。
いや、違う。「不在」は消えたりなんかしない。常にそこにあるのだ。顔と顔を突き合わせていない限り。いま、ここには父親の「不在」がある。××さんの「不在」がある。ほかのひとの「不在」も存在するのだろうけど、私に確認できるのはその二つの大きな「不在」だ。いまのところは。
「不在」に慣れるにはどうしたらいいんだろう。強くあること? でも、私はこれでも精いっぱい強く生きてきたつもりだ。これ以上、まだ、足りないの?
いや、たぶん「不在」に慣れることなどないのだろう。……わかんないけど。でも、「不在」の存在感は大きなものだ。だから……。
……慣れるのかな。やっぱり。
でもさ、別れたら、慣れなきゃいけないんだよなあ。
生きている限り、別れはつきものだからなあ。
「不在っていうのは影みたいなもんだ。エスケイプしたら不在が残る。教室に、家に、あらゆる、いるべき場所に不在は残る。」(『エスケイプ/アブセント』絲山秋子)
うん、うん、まったくもってその通りだと思ったよ。
「不在」を大事に、「不在」を励みに、「不在」を救いにして生きてゆけたらもうなにもこわいものはない気がするけどね。私は、まだ、未熟ゆえ。「不在」の毒気に、あてられてるのよ。
もっと書きたい気もするけど、「やりすぎはよくない」と父親からも言われているので、きょうは「不在」を感じながら休むことにしますよ。でも、いくぶん気もちがましになった。文章は、救いだねやはり。文章こそが私の救いだよ。
ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」が無性に聴きたい。
"Don't be afraid to try again"ってとこだけリピートしてる。頭のなかで。
もう一回、やってみることを恐れるな。
いまは唯川恵の『愛なんか』と米澤穂信の『インシテミル』を読んでる。
今日読んだ、『おおきく振りかぶって』は意外と面白かったな。野球マンガ。
二巻までしか病院になくて残念だ。
病院で音楽がきけたらいいのに……。となりのひとがきいてるよ。
でも、まだ、私には、ちょっと早いかな。どうだろう?
よく眠れるといいけど。
たかぶって、ないかなあ。
音もれを、してきされるのは大ていゆら帝の「ゆらゆら帝国で考え中」。
Sと、××さん。
けっこう傷ついたんだからな。ま、私が悪いのだけど。
(あざらしのイラストが描いてある)
またあしたーーーーー
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