#言の葉萌芽月間 お題 祭りの準備


 粘度を増して うとうと急かす ミモザの視界に

 あなたのいろ あいした花 すきに溺れて 籠の奥底で微睡む

 半透明の明るみを齎す秘に焚べて、魅せる ランチュウたち

 琥珀の眼球が ブランデーに解けて、密やかな前夜祭を行う

 見知らぬ夜の幕開け 薄ら笑いの獣道に ヒソヒソ

 茂み騒つくトンネルは 沢山の黄金虫が 集り侍ると云う

 膨らんでは縮み腹を軋ませ、あのひの約束を含ませ

 忌々しく今生を光らせた、ソーダ水のあくびを呑み込む

 今宵も又、芳醇で濃ゆい、和らぎの果実が鳴る生る

 爆ぜて燃ゆるお囃子も、馳せる焔と裏腹に吐露化てしまう

 「ぼくもつれていってくれよ」

 幾年も続く囃しに咏う。泡沫は水面をまっすぐに昇る、

 ただ惑いなき魂たちが空虚な膨張感に弾けて消えては

 玄に惹かれてやまない夜光虫の交尾。

 唯一つに想い焦がれる世に、誰一人わからぬまま。

 かぎりなくつづく未来その奥に、色褪せた残照

 陰のまつり。祖の碑の櫓、今宵も又、あなたと。

 



 #言の葉萌芽月間 お題 祭りの準備

 使用、ミモザ 黄金虫 ソーダ水

 必要、ぼくもつれてってくれよ

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