18話 教会からの呼び出し


 ドゥラークさんとリディアさんが私達のパーティに加入してから数日が経ちました。

 Bランクとなったドゥラークさんの実力は本物でしたが、私が驚いたのはリディアさんの実力です。

 

 大型のフォレストウルフに挑むだけあって、ドゥラークさんには及びませんが、この町の冒険者達と比べれば頭一つ抜けて強かったです。


 私とドゥラークさんは魔物退治を中心に、エレンとリディアさんは治療院でのお仕事を中心に依頼をこなしています。

 これはギルガさんの采配で、私は抗議しましたが覆る事はありませんでした。

 エレンと一緒に仕事ができないのは残念ですが、リディアさんが護衛をしてくれているので、とりあえずは安心できます。まぁ、もし何かあれば命で償ってもらいますけどね。

 まぁ、これ以上仲良くならないように釘は刺していますが……。


「こーら、レティ。またリディアさんを睨んでいる」

「え? あ、無意識に睨んでしまいましたか。申し訳ないです」

「私に謝ってもしょうがないでしょ」

「そうですか?」


 リディアさんは私の視線が怖いらしくすぐに目をそらします。

 そうです。

 エレンに近付き過ぎたら、虐めちゃいますよ……って冗談ですよ。


 ギルガさんはフォレストウルフの報酬を使い、一軒の屋敷を購入しました。

 この屋敷が私達の拠点になっています。


 私達はその日の夜に一日の仕事などの報告会をしています。

 ギルガさんがいる時はギルガさんが進行を進めてくれますが、今日はギルガさんは出かけています。

 こういう場合は、年長者のドゥラークさんが進めてくれます。

 

「ギルガの旦那は?」

「ギルガさんなら、カンダタさんに呼び出されていたよ」

「何か嫌な予感がするな」


 ドゥラークさんはなんだかんだと面倒見が良いらしく、縁の下の力持ちとなってくれています。


「まぁ、いいや。今日も何もなかったな」

「そうですね。エレンは何かありましたか?」


 治療院の方も、盗賊団の壊滅と共に余裕ができたみたいです。

 ならば、治療院にどういったお仕事が? と思ったのだが、治療ギルドのギルドマスター、セラピアさんがエレンに治療系魔法を教えているそうです。

 教えて貰ってお金が入るのですからお得だと思ったのですが、もしもの時に協力する事を約束させられたそうです。


 エレンが嫌々約束させられたなら痛めつけに行くのですが、エレンが嬉しそうに話していたので悪い事ではないんでしょう。

 リディアさんはエレンにくっついているだけなので報告を聞く必要はありません。


「ねぇ、レティシアちゃんって私への対応が酷すぎない?」

「そうですか? 真っ当な対応です」

「ひ、酷い……」


 私がリディアさんで遊んでいると、ギルガさんが帰ってきます。

 ギルガさんはそのまま私達の前に座り、一枚の依頼書を私達に見せてきます。


【緊急依頼・教会で神官長の依頼を受ける】

 

 教会ですか……。

 この依頼書を燃やしましょう。


「おい。話を聞く前に燃やそうとするな。それにレティシアだけじゃない。ドゥラークもリディアも露骨に嫌そうな顔をするな」


 リディアさんはともかく、ドゥラークさんも教会にはあまり良い印象は持っていないみたいです。

 ドゥラークさんにもエレンの事は話してあります。


「しかしだな。エレンの事を黙っておくのなら、教会に近付くのは得策ではないだろうよ。どうして、こんな依頼を持ってきたんだ?」

「カンダタさんからの指名依頼だ」

「指名依頼? ギルマスはなにを企んでいやがる」


 ドゥラークさんが悪態を吐く気持ちは分かります。私も同じ気持ちですから。


「オレも当然抗議したさ。しかし、カンダタさんにも考えがあるらしく、神官長にあって欲しいとの事だ。今回は、俺とレティシア、エレンの三人で行く」

「エレンを教会に近付けるのは危険ではないですか?」

「そこは大丈夫だ。明日会いに行く教会の神官長はカンダタさんの古い知り合いだ。もしもの時は武力行使をしていいとの許可も得ている」


 もしもの時に暴れていいのなら、行くだけ行ってみましょう。



 次の日。

 私とエレンとギルガさんの三人は、この町の教会へと出向きます。

 教会の入り口に法衣と呼ばれる聖職者が着る服を着ているお爺さんが立っています。

 この方が神官長ですか?


「あんたがカンダタさんの古い知り合いで神官長のレウスさんだな」

「そうです。いきなり呼びつけて申し訳ありません。こちらへとどうぞ」


 レウスさんという人は、私達を教会の一室へと案内してくれました。

 部屋に入ると私は、この部屋の周りの気配を探ります。

 怪しいモノがいた場合は問答無用で殺します。


「レティシア……」

「大丈夫です。誰もいませんよ」

「ははは。警戒するのは分かりますが、そちらのお嬢さんに何もするつもりはありませんよ」

「何? という事はカンダタさんからある程度は聞いているのか?」

「えぇ。エレンさんが聖女・・という事は聞かされていますよ」


 私は懐に隠してあったナイフをレウスの首筋に突きつけます。


「ほほほ。カンダタに聞いた通りですね。一つ間違った行動をとれば、この町は滅亡すると言っていた意味が分かりました。話をしたいのでこの物騒なモノを仕舞ってくれませんか」

「それは貴方の態度次第です」

「ふふふ、安心してください。この町の教会は勇者タロウにエレンさんを引き渡すつもりはありませんよ」

「その言葉を信用しろと?」

「信用するかしないかは貴女に任せます。もし、信用できないのであれば、このナイフをこのまま私の首を刺してください」


 その言葉で私はナイフを仕舞い、座りなおします。


「で、貴方はどうして私達を呼んだのですか?」

「そうですね。まず貴方がたには勇者タロウの話をしておく必要があります」

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