第39話エロい女医先生はいなかったけど
ふたりが見たものは、見知らぬ美女。
サラッとした長いストレートの黒髪。制服もしっかりと着ていて真面目そうな印象をうけるが、けっして野暮ったくはない、気さくそうに笑う美人さんと、子犬のように美人さんに駆け寄って行く弟月くんの姿だった。ふたりには弟月くんに尻尾があって、凄い勢いで振っている幻覚が見えた。
「弟月くん。お疲れ様。今日も早いね。」
「先輩もお疲れ様です。各階の水道の石鹸のチェック終わりました。」
「ふふ、キミはいつも真面目に仕事を頑張っているね。助かるよ。」
「いえ、そんなこと、ないですよ。」
「な、なんやねん。あの美人さんは?弟月くんメッチャなついてるじゃないっすか!子犬みたいでカワイイんですけど!」
「落ち着きなよ明日香。口調が変になってるよ。 どうぞ。」
「結も落ち着いて、どうぞはもう終わったから。」
「?弟月くん、そこのふたりは知り合いかな?」
「あ、はい!ふたりともぼくの大事な友達です!」
「…へぇ 大事な 友達ねぇ。」
「先輩?」
「やぁこんにちは、ふたりは弟月くんのお友達なんだって?」
「お、なんだやんのか?お姉さんはポッと出の女には負けませんよ。」
「落ち着きなよ明日香。あ、あと私は弟月くんの友達じゃなくて恋人です。」
「おいぃい⁉ さらッと何嘘ついてんの結!」
「あはは、面白い人たちだね。弟月くんからはお友達と聞いたよ。ただの、ただの友達ってね。」
「えぇええ⁉ あんたも何さらっと嘘ついてんの?弟月くんは大事なって言ってたでしょ!」
今知り合ったばかり、言葉を交わしたのもほんの少しだけ、だが、それだけで充分だった。それだけではっきりとわかった。
この女は
ウチらの
敵だ!
三人は一歩も引かずに、ほぼゼロ距離でガンを飛ばしあう。近距離でバチバチと火花が飛ぶ。
「あ、あの、みんなどうしたの?」
「いや、なんでもないよ弟月くん。キミの ただの お友達に挨拶をしようと思っただけだよ。」
「あはは、そういうあなたは弟月くんの何なのでしょうか? ただの 先輩ですかぁ?」
「ちょっと明日香、押さえなよ。たとえ弟月くんにとって ただの 先輩でも、先輩であることにはかわりないんだから。」
「はは、言うじゃないか。弟月くん、キミの友達はとても面白いね。」
「先輩、全然顔笑ってないですけど本当にそう思ってます?」
「とりあえず!姉帯さん、新妻さんも紹介するね、こちら保健委員会の先輩、八神 優菜(やがみ ゆうな)先輩。いつも委員会ではお世話になってるんだ。」
「どうも、二年の八神だ。弟月くんとはいつもよろしくやらせてもらっているよ。」
「よろしく?」
「やらせてもらってる?」
「で、先輩。このふたりは僕のクラスメイトで、綺麗な金髪の方が新妻 結さん。モデルさんみたいに背が高い姉帯 明日香さん。いつも仲良くしてもらってるんです。」
「どうも~ 綺麗な金髪が自慢の新妻結で~す!弟月くんとは食事をアーンして食べさせあう仲です。」
「モデルのように綺麗な姉帯明日香です。弟月くんとは一夜を一つ屋根の下で過ごした仲です。」
「ほう…」
「……。」
「……。」
「……。」
「え、何でそんなに険悪なの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます