第15話 いざ!夏休みへ!

一学期最後の登校日

明日から夏休みで、学校中が浮かれ気分の中。


ぼくは、少し緊張しながら学校に来ていた。

何故かというと…。


高校生活が始まって、目立たないぼくにも友達ができた。

クラスメイトのギャル、新妻さんと姉帯さんだ。


初めのうちは友達が出来ずに寂しい学校生活を送っていたぼくだったが、よく構ってくれるふたりのおかげで最近は毎日が楽しく、学校に来ることが楽しみになっていた。



だが、夏休みとなると当然学校には登校しない。

ふたりに会うには、遊びに誘ったり、何かしらの理由で会わなければならないのだ。


一応、夏休み中も遊ぼうという話はしているのだが、日付を決めているわけではない。

SNSのアカウントも知っているので、メッセージを送ればいいのだが、女の子に遊びのお誘いをするのは、ぼくにはかなりハードルが高かった。


なんとか、今日のうちに話の流れで、その辺も聞けたらいいなぁ。だが、果たしてそんなチャンスがあるか、なかったらどうしよう。

などなど、心の中であれやこれやと考えていたからだった。









「弟月くん!おはよー!ねね、海!いつ行こっか?」

「おはよう、海もだし、お盆すぎたら夏祭りもあるじゃん。一緒に行こうよ。」




「…うぅ、ありがとうございますぅ。」

「あれ?どうしたの?」


教室に着いたぼくに、姉帯さんと新妻さんがすぐに夏休みの予定の話をしてくれた。

登校中、変な会話シミュレーションまでして、どう話をするか考えていたぼくの心配は一瞬にして無用のものとなったのだ。


さすが、ギャル。コミュ力の塊だ!

思わずお礼を言ってしまうぼくだった。


「イベントは分散させた方が楽しみになっていいよね?」

「たしかに〜。夏祭りは後半だし、海は早めに行っちゃう?」

「いいね!お姉さんの水着姿、さっそく披露しちゃうからね!」



順調に予定を決めていくぼくたち。

いよいよ夏休みになる実感がわいてくる。


心配していた休み中の予定も、海と夏祭りまで一緒に行けることになった。

高校生活が始まってから、しばらくの間友達がいなかったあの頃のぼくが、今の状況を見たら泣いて喜んでくれるだろう!




海と祭りの予定が決まり大満足のぼくだった。


だったのだが、これだけの予定で満足できたのは元ボッチのぼくだけだったようで…。


「ありがとう姉帯さん!新妻さん!ぼく楽しみだよ!」


そう言って話が終わった感を出すぼくに新妻さんから突っ込みが入る。


「ちょ、ちょっと弟月くん?まだ他にも決めようよ!」

「…へ?他?」

「まだ海と夏祭りしか決まってないよ!たった二回だけだよ!夏休み中二回しか会えないんだよ‼︎」

「そ、そうだね。」


いつもより力の入った必死の形相の新妻さん。

新妻さんがこんなに必死そうにしているところなんて初めて見た。






「たった二回って少ないじゃん。弟月くんは寂しくない?わ、私は、私は寂しいな…。」モジモジ




はい、天使です。

可愛さ天使級ですね。

あんなに必死そうだったのに、急にモジモジして寂しいって…。


新妻さんの可愛さで気絶しそうだった。




「はい、はい!お姉さんも寂しいでーす!弟月くんはもっと私たちに構うべきだと思います!」


姉帯さんも話に乗っかってくる。

ふたりとも、ぼくともっと遊びたいって言ってくれるなんて…。

ぼくは、かなり感動していた。



「ご、ごめんね、ふたりとも。ぼく、これまで夏休みに誰かと遊んだりなんてしたことなくて、休み中もふたりに会えるだけで、とっても嬉しくて…。だけど、うん!ぼくも姉帯さんと新妻さんと、もっと一緒にいたいよ!」



「……。」心臓ドキドキ

「……。」心臓バクバク



「あ、あれ?」

ふたりとも固まってしまった。


「一緒にいたい、弟月くんが、私ともっと一緒にいたいって…ふふ。」

新妻さんはブツブツと何か言ったまま微動だにしない。


「弟月くん!式は?式はいつにする⁉︎」

「え?式…?」

グイッと姉帯さんに手を握られる。式ってなに?


「絶対幸せにするから、子供はたくさん欲しいよね。大丈夫、お姉さんに任せて!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてね、姉帯さん。」



「弟月くん…。」

「あ、新妻さん!元に戻ったんだね!姉帯さんを正気に戻すの手伝って!」







「式はいつがいいかな?」


あ、あなたもかーー‼︎



その後、なんとか二人を落ち着かせ、その後は三人で夏休みの計画を立てるのだった。


ぼくの高校生活始めての夏休みは、これまでで一番の夏になりそうだった。


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