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◇
「蓮さん、スタンバイ!」
「おう」
私はガウンを身に着け、香坂に手を引かれて歩く。
「類、浮かない顔だね? まさか、ガウンの下は真っ裸とか?」
「ノーブラだ」
「まじで!?」
香坂の言葉に、諸星は目を見開く。
ステージ上にはbeautiful heartとbeautiful cherryのスタッフとモデルがスタンバイしていた。
勝ち誇ったような瑠璃に、香坂は耳元でこう囁いた。
「類に卑怯な真似はするな。俺にお仕置きされたいのか?」
「……っ、何のことかしら? 変な言い掛かりはやめて下さい」
瑠璃はバツが悪そうに不機嫌な顔をした。
ステージにスポットライトが当たる。瑠璃のヘアはクラシカルなまとめ髪。メイクはパールの入った口紅で唇を強調しセクシーに仕上げてある。
beautiful cherryは編み込みオールアップ。白いうなじがセクシーだが、メイクはナチュラルメイクに仕上げてある
私はエクステをつける予定だったが、香坂は突然ステージ上で、私の髪のカットを始めた。
想定外の行動に諸星はステージ上でアタフタし、会場からもどよめきが起きる。
丸いシルエットになるように、うち巻きボブ。耳前の髪はふんわりと顔を包み込むようにカットしブローして仕上げていく。
水着の時の派手さとは異なり、ヘアはカットとブローのみで、メイクもナチュラル。
これで終わり? と思っていたら、香坂は仕上げにラメ入りのスプレーを吹きつけた。
beautiful cherryのモデルがガウンを脱ぎ捨てる。レースたっぷりの厚みのある生地の黒いドレス。胸元は大きく開きふくよかな谷間が見えセクシーだ。
瑠璃がガウンを脱ぎ捨てると、そこには香坂がデザインしたものと全く同じデザインのドレスを着用していた。
ドレスの色はビビッドな赤、レース素材からは白い肌が透けて見える。
色は異なるが、デザインは香坂のドレスと同じ……。
beautiful heartが香坂のデザインを盗んだ? いや、瑠璃が香坂のデザイン盗んだに違いない。
香坂はそのドレスを見ても、慌てることなく平然としている。
もしかして……こうなることを予測していたってこと?
だから……
私にあのドレスを着せなかった……。
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