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「類、開店するよ」
「はい」
beautiful magicはいつもの朝を迎える。常連客の小池はヘアメイクより先にブティックのマネキンに目を向けた。
「蓮さん、あのワンピース新作でしょう。素敵、あのワンピースに似合う髪型にして」
「さすがだな。小池様のためにオーダーしたようなワンピースだよ。絶対に似合う」
「うんとセクシーにして。今日はKIYOHASHIデパートの支店長と会食予定なの。あそこの支店長はセクシー系には弱いのよ。売り場拡大のための商談だから、宜しくね」
「そんなことして、男の本能に火がついたりしないのか?」
「大丈夫、私はそこまでバカじゃないから。蓮さんなら、火が点いてもいいけどね」
小池は体をくねらせ、香坂に唇を寄せる。
「いい加減、真理亜って呼んでよ。小池様なんて他人行儀で嫌だな」
他人行儀で嫌?
えっ? まさか? あの二人?
香坂は笑顔で小池のヘアメイクを始める。髪を緩く編み込みし、ゴムでひとつに結び、毛束の真ん中をさき、さらに緩く編み込んでいく。
指先はしなやかに動き、あっというまに少しルーズな編み込みヘアを作った。
香坂の指は魔法の手。どんなヘアスタイルも、短時間で簡単に作り上げてしまう。
小池は毎日来店される常連客だ。メイクもヘアスタイルに合わせ、手際よく仕上げる。
香坂は小池を『小池様』と呼ぶが、二人の仕草や視線の交わしかたは、男女の関係があると思えなくもない。
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