37
スカートは丈は膝上だが、歩くとフレアがふわふわと揺れた。
気持ちいいな。着心地抜群。
香坂からは想像出来ない、優しさを感じる。
「類、試着した?」
ドア越しに諸星に声を掛けられ、私は部屋から出た。
四人は黙って私を見つめた。
なによ、何か言ってよ……。
黙って見つめられたら、緊張してしまう。
「意外だな、バストサイズが気にならない」
やっぱりバストなの?
男の頭ん中、それしかないのか?
「ちょっと座れ」
香坂はメイク道具を取り出し、BBクリームを素顔の上に少しずつおいて、メイクを始めた。
香坂の手はマジシャンのように動く。コンシーラーで目の下や鼻のきわをカバーし、パフでパウダーを内から外に向かって顔全体に薄くのばしていく。
エステシャンという職業柄、他人の顔を触ることはあっても、男性に顔を触られるのは初体験だった。
気持ちいい……。
俺様で最低な男だけど、テクニシャンだな。
思わず瞼を閉じる。
香坂がチークを入れながら、耳元で囁いた。
「なに感じてんだよ」
「……っあ」
「まだ我慢しろ」
「ば、ばかなこと言わないで」
香坂の言葉に顔を赤く染めた私は、その言葉を変に解釈したことがみんなに悟られ、さらにカーッと血が昇る。
香坂は平然とメイクを続けた。アイブロウペンシルで、眉の形を整えるように描く。ペンシルで書いた部分はぼかし、眉マスカラを毛の流れに沿って塗った。
これだけで顔の印象は随分異なる。
香坂は指を使い、瞼にアイシャドーをのせ、いちばん薄い色をアイホール全体にのばした。
何とも言えない感触に、私は心地よさを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます