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 スカートは丈は膝上だが、歩くとフレアがふわふわと揺れた。


 気持ちいいな。着心地抜群。


 香坂からは想像出来ない、優しさを感じる。


「類、試着した?」


 ドア越しに諸星に声を掛けられ、私は部屋から出た。


 四人は黙って私を見つめた。


 なによ、何か言ってよ……。

 黙って見つめられたら、緊張してしまう。


「意外だな、バストサイズが気にならない」


 やっぱりバストなの?

 男の頭ん中、それしかないのか?


「ちょっと座れ」


 香坂はメイク道具を取り出し、BBクリームを素顔の上に少しずつおいて、メイクを始めた。


 香坂の手はマジシャンのように動く。コンシーラーで目の下や鼻のきわをカバーし、パフでパウダーを内から外に向かって顔全体に薄くのばしていく。


 エステシャンという職業柄、他人の顔を触ることはあっても、男性に顔を触られるのは初体験だった。


 気持ちいい……。


 俺様で最低な男だけど、テクニシャンだな。


 思わず瞼を閉じる。


 香坂がチークを入れながら、耳元で囁いた。


「なに感じてんだよ」


「……っあ」


「まだ我慢しろ」


「ば、ばかなこと言わないで」


 香坂の言葉に顔を赤く染めた私は、その言葉を変に解釈したことがみんなに悟られ、さらにカーッと血が昇る。


 香坂は平然とメイクを続けた。アイブロウペンシルで、眉の形を整えるように描く。ペンシルで書いた部分はぼかし、眉マスカラを毛の流れに沿って塗った。


 これだけで顔の印象は随分異なる。


 香坂は指を使い、瞼にアイシャドーをのせ、いちばん薄い色をアイホール全体にのばした。


 何とも言えない感触に、私は心地よさを感じた。

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