第12話 再起の時
エメラ、ユラ、二人が悪夢から目覚めた次の朝、エメラはスレイとシャトーと共に朝食を取っていた。
今日の朝食はベーコンとパン、そしてレタスのサラダだ。香ばしい匂いが辺りを包む。
三人は、長テーブルに向かってそれぞれ椅子に腰掛け食事を取っていた。
相変わらず頑丈そうな木のテーブルに乗せられた皿からフォークと皿がぶつかる音が聞こえる。
「なぁ、二人とも」
不意にエメラが口を開く。
「重要な話しがあるんだ、聞いてくれ」
「どうした?」
スレイが訝って訊ねる。
「私、『狼』の一員になるよ」
スレイとシャトーは目を丸くした。
「本当か! 大歓迎だ!」
「ですね、シェーメル隊長の娘さんが再び同志になると知ったら、亡きシェーメルも喜ぶでしょう」
二人とも嬉しそうに喜び合う。
そして再びエメラが二人に語りかける。
「これも奇縁なのかな。夕べ父の夢見た。最後に父を見た時の夢を。いや、正確には処刑の時が最後か……」
ふっと目を伏せる。
「復讐する気など毛頭無い。今でも、これから起こることに不安しかない。でも、私に課せられた使命だと思うんだ。父の……『狼』の隊長の娘として、私が成すべきことだと」
「そうか、だが決まりだな!」
スレイが手を差し出す。
「ありがとう」
エメラも手を差し出す。
「さぁ、これで再び『狼』の反撃の時だ! 各地の同志と共に、現政府を倒そう!」
スレイは食事を取るのも忘れて叫ぶ。
「まずは憎き副大統領……いや、今は大統領代理か、ユラを倒す」
「待ってくれ!」
エメラが顔を伏せると、二人は不思議そうな顔でエメラを見つめた
「ユラは……殺さないでくれ……」
「何故だ!? 残虐非道な反乱軍狩りのボスだぞ? 俺たちの一番の敵じゃないか」
「ユラは……私の妹なんだ。たった一人の生きている家族……だから……」
スレイは心底驚いた顔をする。シャトーの表情は変わらない。
「そうだったのか……。だがなんでおやっさんの娘がこんな真似をしてるんだ!?」
「それは分からない、だけど、母は父に殺されたらしい。ユラはそれを目撃して……」
「向こうも復讐、というわけなのか」
スレイがため息をつく。
「憎しみは新たな憎しみしか生まない……。だから私はこの連鎖を断ち切りたいんだ。ユラを殺したら、また新たな憎しみが生まれる」
「だが、奴は俺たちの敵だ。行く手を阻むなら殺るしかない」
場に緊張が走る。
その時、急に階段を降りてくる人影が浮かんだ。
不意に空気が凍る。
「伝令です! ヤン、政府軍に捕縛されたとのこと!」
エメラ、スレイ、シャトー。三人の顔色が変わった――
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