第3話 「ソードアート・オンライン」シリーズ
その学校のカラーもあることなので色々だろうなとは思うけれど、うちの学校はそんなに勉強ができる人が多くない……らしい(実は、とある先生にこう言われて絶句したことがある・苦笑)。
だからなのか、放っておいても自分でしっかり読書ができるという生徒は多くない。
けれども、それでも「読みたい」と思わせる作品には、やっぱり力がある。
たとえば川原礫さんの「ソードアート・オンライン(SAO)」シリーズ。
表紙が今どきの萌えキャラ絵で、いわゆるライトノベルらしい装丁であるために、最初は私も、先生方の顔色をうかがいつつ恐る恐る、そろ~っと入れた。
実はほかの学校の司書さんで「あの装丁に嫌悪感がある」という方を知っている。
「生徒は『入れて、入れて』ってすごく言うけど、あれは入れたくないのよね」
「あの背表紙がうちの書架に並ぶのがイヤで……」
と、そんなことを本当に嫌そうに語っておられた。言葉尻からも表情からも、かなり敬遠していることがうかがわれた。
「えーと……。いや、うち、あるんだけど……」
と思いつつ、私はその方がうちにあるSAOをぺらぺらめくって顔を顰めているのを黙って観察していた。
古きよき本を愛する人ほど、ああいう装丁にはアレルギー反応が出るという良い例だなと思った。ましてや、ある程度のお年になっている真面目な司書さんだと、そうなりがちなのだろうなと。
あの装丁も、本の売れなくなったこの時代に、出版社が売るために必死に編み出した方法のひとつなわけだ。けれど、現場の(真面目な)司書には毛嫌いされ、はねられてしまいかねないというこの現実……。
とは言え、すでに書いた通り、うちは気にせず入れている。あれも、ちゃんと中身を読めば、読者に「色々つらいことがあっても、それでも頑張ろうよ」というメッセージが読み取れる作品だと思うからだ。
生徒たちもよく分かっていて、他の子が借りていて今は図書館になくても、「つぎ、借りたいです」と予約まで入れていく子も多い。
一応、教育現場であるという縛りがあって、入れられる本にはある程度の制限がある。けれど、それでもここは図書館だ。
図書館は、できるだけ利用者の需要に応える場所でなくてはならない。
学校である以上、18禁のものは当然ダメだけれど、少なくとも単なる司書の好みや勝手な判断で「これは入れよう、これは入れたくない」と利用者から本を遠ざけるのはいかがなものかと私は思う。
それを読んで、ちょっと元気になったり、同じ本を読んだことのある友達と、休み時間に話に花が咲いたりする。そういうことのための本があってもいいわけだ。
ついでながら数か月後、同じ司書さんが同様のことを理由に「やっぱりアレ、入れることにしようかと思って……」とおっしゃった。
それを聞いて、ちょっとほっとした私がいたのでした。ははは。
さてさて、今回はここまでといたします。
お付き合いをありがとうございました。
気が向いたらまた更新したいと思います。
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