第30話
午後の部は特に知り合いが出ることはなく、ただ淡々と終わっていった。結果は三位。後半戦の騎馬戦で緑が怒濤の追い上げを見せ、その勢いのまま俺たちを越していってしまった。
「もうちょっとでしたね」
「そうだな」
全ての競技が終わって片付けに入っている。俺と菜穂、その他四人は自分たちが使っていたテントを片付けている。真奈美や耀太は他のテントの片付けに回っている。
「そういえば委員会の方の片付けはいいのか?」
「そっちはもう終わってます。と言っても私たち誘導班だけですけど」
アナウンス席の方をチラッと見ると重そうなスピードや器具、長いコードなどをせかせかと運んでいるのが見える。他にも球技で使った大玉や縄、平均台なども数人で運んでいる。
「テントの脚持ってくれ!」
名の知らない生徒の声に従いテントの脚を持つ。菜穂も一番近くの足を持った。
「そっちから先に脚を折ってくれ」
そう言われて俺、菜穂、そしてもう一人の生徒でゆっくりと脚を持ち上げてから内側に畳む。テントの脚が地面に当たってしまわないように片足でテントの脚を蹴りながら曲げていく。
俺たちがおろし終わると反対側もゆっくりとテントの脚を折った。
そこからの作業はテキパキと片付いてしまった。テントの屋根を取り外して脚組を種類分けして束ねる。それを紐で結んで倉庫に運ぶだけ。
「先輩、そっち持ってください」
「あ、ああ」
菜穂に指示されて6本の脚が束ねられたものを抱える。重量はそれほどなく、もしかしたら俺一人でも持っていけるのでは?と思うものだった。
持ち上げると菜穂がスタスタと歩き始めるのでそのことは言う事はなかった。
倉庫に着くと他のテントの脚も運ばれて来ていて、倉庫内でテントの整理をしながら収納している生徒に渡すまで少しの時間がかかった。
「体育祭終わっちゃいましたね」
「当日はあったいう間だからな」
練習期間はあれだけ怠くて嫌で仕方ないのに、本番は楽しくて終わった後にはその余韻に浸っていたくなったりする。
「手伝いは・・・いらなさそうですね」
グランドの方を見ながら菜穂が言った。菜穂の顔は少し寂しさを感じさせる。数分前までテントで覆われていたグランドはこれまで通り殺風景な駄々広い敷地に戻っていた。
「教室に帰るか」
「そうですね」
グランドの中央あたりで別の人とテントを運んで来ている二人を見つけると教室の方に脚を向けた。
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