第12話
「ただいま」
先輩と別れた私は十分ほどで家に着いた。玄関で靴を脱いでいるとリビングの扉が開き私の姉である恵那えなが出てきた。
「おかえり、今日は遅かったねってどうした?」
姉は私の顔を見ながら不思議なものでも見たような顔をした。
「何が?」
私は何があったのかわからなかった。服にはコーヒーも注文したチョコケーキもついていない。靴や髪にも変化はなかった。
「あや、顔がすごくニヤけているけど・・・」
姉に言われ玄関にある小さな鏡で自分の顔を見る。そこに映ったのはだらしない顔をした私だった。両手で頬を持ち上げたりしてほぐす。だけど数分前のことを思い出すと再び顔が緩む。
「あんた今日何があった?」
「友達と喫茶店に行っただけだけど」
「本当?」
姉の追及はすぐには終わらなかった。食後も風呂上りも続いたが「友達」といいごまかした。姉は納得したような顔はしながったが、寝る前にはようやくあきらめてくれた。
「お姉ちゃんしつこかったな」
自分のベットに飛び込み横になる。やわらかいベットはひんやりとして気持ちがよかった。一人になるとまた今日のことを思い出してしまう。
「ありがとうって明日千佳に言おう」
今日の放課後の私の行動を考えたのは私の後ろの席の
「菜穂、今日は屋上行かないの?」
昼休み、後ろから声がして振り向くと千佳はこちらを見ていた。
「今日はね、先輩用事があるんだって」
「そうなんだ、そのお弁当余ってる?」
「うん」
千佳は今日お弁当を家に忘れたらしく、お金もないというので、本来先輩用に作ったお弁当をあげた。
「助かるよ、午後は空腹で倒れると思ってたから」
千佳と向かい合わせにお弁当を食べる。一昨日はこうだったのになんだか懐かしく感じた。
「それで先輩とはどうなの?」
「ようやくお昼に誘えたぐらいだよ」
自分で言っていて進歩が少ないことに落ち込む。
「お弁当のお礼というわけではないんだけど、放課後先輩を誘う方法を教えようか?」
「そんな方法があるの!?」
ついそのことが気になり席を立って前のめりになった。千佳は「まあまあ」と言って私に座るように指示する。
「作戦はこうよ」
聞いててよかったと今なら思う。作戦に関しては半信半疑だった。でも先輩は断ることをしなかった。先輩の優しさに付け込んだような後悔もあるが、それよりも嬉しさの方が増していた。
「明日のお昼に早くならないかな」
今から明日が楽しみで仕方なかった。
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